こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

茶々 −天涯の貴妃−

otello2007-12-27

茶々 −天涯の貴妃−


ポイント ★★*
DATE 07/12/24
THEATER THYK
監督 橋本一
ナンバー 262
出演 和央ようか/寺島しのぶ/高島礼子/渡部篤郎
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


燃え盛る炎はいつしか黄金の紙吹雪となり、豪華絢爛を極めた安土桃山時代の終焉を告げる。その気性の激しさと頭の回転のよさで豊臣秀吉に愛でられた女・茶々。幼いころから女であることの悲劇を十分すぎるほど体験し、長じては女であることの利点を最大限に生かして日本の最高権力者を陰で操る。愛と憎悪、怒りと悲しみを胸に抱きながら、男たちの政治の道具でしかなかった女たち。とにかく生き延びて子孫を残すこと、それが人生における勝利であるとこの作品は訴える。


織田に滅ぼされた浅井長政の娘・茶々は豊臣秀吉に見初められ側室となる。秀吉の寵愛を一身に受けた茶々は秀頼を産み、秀吉亡き後の大坂城の主として権勢を振るうが、やがて徳川家康が大軍を大坂に送り、大坂城の明け渡しを要求する。


茶々を、豊臣滅亡の原因を作った毒婦としてではなく、戦国乱世にもてあそばれながらも、後には自ら運命を切り開いていこうとする勇敢な女性として描いている。茶々は豊臣の世継の生母となり、妹の小督は徳川に嫁ぐ。彼女らの母・お市の立場から見れば、どちらに転んでも浅井の血を引くものがやがて天下人となるのだ。信長から父の頭骨の杯を賜ったときに茶々は父の無念を晴らすべく決心したのだろう。すさまじい女の執念と決意を和央ようかは大きな目から発する鋭い眼光で表現する。


とはいえやはり彼女たちはやはり歴史においてはやはり脇役。見せ場となるのは秀吉が贅を尽くした醍醐の花見の饗宴であったり、大坂の陣における真田幸村の奇襲作戦。赤々と燃える大坂の街を天守閣から眺めながら最期の時を悟る茶々と秀頼に、もう少し自分たちの一生のはかなさについて語り合うなどの工夫がほしかった。さらに難を言えば、小督に扮した寺島しのぶの方がどう見てもオバサン顔で茶々より年上に見えるのはどうしたことか。メークなどでごまかしが効くはずなのだから、何とかしてほしかった。


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