こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グミ・チョコレート・パイン

otello2008-01-12

グミ・チョコレート・パイン


ポイント ★★*
DATE 07/11/27
THEATER SG
監督 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
ナンバー 242
出演 石田卓也/黒川芽以/柄本佑/大森南朋
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


何の根拠もなく「オレは他のヤツらと違う」と思い込み、明るい将来が約束されていると信じていた。その一方で、自分が何者で何ができるのかに悩み、ちょっとしたことにも傷つく。そんな高校生たちの物語には違いないのだが、この映画に描かれている少年たちはピカピカの青春とは無縁の存在。それでも中年にさしかかった「今」から見れば、確かにあの時代は輝いていたと思える。何かひとつのことに熱くなるのはダサいという価値観が支配的だった「新人類」と呼ばれていた世代でさえ、記憶の中の自画像は美しいのだ。


会社をリストラされて実家に戻ってきた賢三は高校で同級生だった美甘子の自殺を知る。そして賢三に残された謎の遺書。賢三は親友だったタクオとカクボンに連絡を取り、ありし日の美甘子を回想する。


想いを寄せていた美甘子とぎこちないデートを繰り返した後、彼女が突然手の届かない遠いところに行ってしまう。そして追いかけようとしても走り出すことすらできないもどかしさ。世の中に対して突っ張って生きていくことがカッコいいと思っていてたのに、いつの間にかカッコ悪い大人になってしまっている。実は高校時代もまったく冴えなかった賢三は遺書の全文を手に入れることで、やっとたった一つだけ青春時代に誇れるものを見つけるという構成が秀逸。だからといって今の賢三に復活の兆しが見られるわけではないのだが。。。


ボケたオヤジや隣室のオッサン、パンクロッカーなど賢三たちを取り巻くキャラクターがとぼけた味を出している。その中でも一緒にバンドを組む山之上に扮した柄本佑は抜群の存在感。強烈なオタク臭を放ちながらも実は尖がっている。賢三たちが目指していた「他とは違うヤツ」というのは山之上のような人物だったのだろう。また、タクオが美人教師に襲い掛かるシーンを渡り廊下のガラス窓越しに見せるなど、シュールな画作りも見られて楽しめる。しかし、多彩な登場人物の織り成すエピソードが一発芸風で全体の構成としては統一感にかけるのが欠点。やはり主人公たる賢三にはもう少し頑張って欲しかった。


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