こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

レンブラントの夜警

otello2008-01-15

レンブラントの夜警 NIGHTWATCHING

ポイント ★★
DATE 07/10/23
THEATER MB
監督 ピーター・グリーナウェイ
ナンバー 214
出演 マーティン・フリーマン/エミリー・ホームズ/エヴァ・バーシッスル/ジョディ・メイ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


巧みに配された人物、精密に計算された光線、細部にまでこだわって再現された扮装。レンブラントが描いた絵画の中の人物情景をそのまま動画にしようとする試みは見事なまでの完成度を誇る。まるで今にも動き出さんとするような原画の登場人物が、額縁の中で命をを与えられたかのようだ。しかし、絵画の構図設定にこだわる余りカメラワークやライティングが単調になり、多岐にわたるキャラクターの心理がうまく交通整理し切れていない。結果として2時間20分近い上映時間は非常に冗漫な印象になってしまった。


画家として成功したいたレンブラントは市警団から集団の肖像画を依頼される。しかし、モデルになる人々を調べるうちに、市警団のメンバーは市民を守るどころかスキャンダルまみれの汚い連中であることを知る。


モデルの身辺調査をしてまで人となりを描きこもうとするレンブラントの絵に対する熱意を通じて、市警団の真実を暴くというミステリー仕立てにしようというのは理解できるのだが、やはり「レンブラントの動画」という制約の下で描かれた物語は不完全燃焼。しかも、背景を説明するような全体的な俯瞰図がなく、エピソードが有機的に結合していない。そもそも一度見ただけではストーリーは難解で、美術館に展示された絵画同様、おのおののシーンを解釈するには解説が必要になってくる。


むろん今までに描きつくされたような、アーティストの表現に対する葛藤や情熱といった陳腐な内容と一線を画そうという意図は明白。その一方で終盤は燃え盛るような愛というテーマに変容してしまう。その転調を納得させるのに、映像だけをぽんと投げ出すような編集の仕方だけではあまりにも不親切だ。「夜警」という美術史に残る傑作からインスピレーションを得た壮大な実験は、表現上の水準に物語の構成がついていけなかった。


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