こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヒトラーの贋札

otello2008-01-19

ヒトラーの贋札 DIE FALSCHER


ポイント ★★★★
DATE 07/9/11
THEATER シネマート
監督 ステファン・ルツォヴィツキー
ナンバー 181
出演 カール・マルコヴィクス/アウグスト・ディール/デヴィッド・シュトリーゾウ/
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


生き残るには敵のために働かなければならず、同胞を裏切ることになる。結果を出さなければ仲間が殺される。協力か死か、ナチスの贋札作りに手を貸したユダヤ人収容者たちがぎりぎりの選択を迫られる中、与えられた仕事をに達成感を覚えていく技術者たち。ガス室や銃殺の恐怖と背中合わせの中で、生き抜くことを優先する者、好待遇を失いたくないと思う者、せめて作業を遅らせて非協力を貫こうとする者、ユダヤ人収容者の中にもさまざまな良心とエゴが葛藤する。人間の強さと弱さ、賢さと狡さ、そして生き抜こうという意思と人生の儚さ。それらが裸でぶつかり合い、すさまじいまでの緊張感を生む。


贋札作りで逮捕されたソロモンはユダヤ人であるため強制収容所に送られる。やがて戦局が悪化、独軍ヘルツォーク少佐の指揮の下、強制収容所から印刷技術者を集めて贋札作りを始め、ソロモンは責任者に任命される。


温かい食事と柔らかいベッドで優遇された自分たちとは反対に、薄い塀一枚向こう側では一般のユダヤ人が生き地獄のような環境におかれている。向こう側へは戻りたくない、その恐怖心を利用してナチスは技術者を急き立てる。そんな中、ソロモンはひたすら感情を押し殺し、どのように立ち回れば自分と仲間が死なずに済むかかを冷静に見極める。英ポンドの贋札でヘルツォークの信頼を得ると、米ドル作りの励みにと自宅にまで招待されるまでになるが、一方で仲間に家族の死で結束が乱れたりする。


憎いはずのナチスに歓待されて心が揺れ、統率を乱す仲間と喧嘩する。いつしかソロモンは贋札作りに没頭するが、できるだけ完成を遅らせる。それがナチスを助けることになり、その分ユダヤ人が殺されるということも分かっている。工房の外のことは頭から追い出し、今日一日生き延びることだけを考える。無事戦争を生き延びても、自分の魂が試されるような強烈な体験をした後では、心は虚無に支配される。贋ドルで豪遊したあと浜辺でダンスを踊るソロモンの背中には果てしない悲しみが漂っていた。


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