結婚しようよ
ポイント ★★
DATE 07/11/1
THEATER 松竹
監督 佐々部清
ナンバー 221
出演 三宅裕司/真野響子/藤沢恵麻/AYAKO
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
一家そろって夕食を食べるという習慣を固持する家庭。娘ふたりはすでに大学生なのに、父親が決めたルールに反発もせず夕方になると家に帰ってくる。そして食卓を囲んでその日の出来事を報告しあう。もはや現代の日本からは消え去った家族の風景。しかし、やがて親離れのときが来て、娘たちは夕食の席から姿を消す。吉田拓郎のフォークソングをふんだんに使い、オヤジ世代のノスタルジーに浸るのかと思えば、娘世代の恋や夢も饒舌に語る。まだまだ子供と思っていた娘たちが旅立ちの季節を迎えたとき、父はどうするか。その葛藤をコミカルに描いている。
妻とふたりの娘と暮らす香取は見習いそば職人・充と知り合い、夕食に招く。やがて充は長女の詩織と付き合い始め、次女の香織もバンド活動で「家族で夕食」のルールが崩れる。そんな時、充と詩織の交際に反対の香取は、充を殴ってしまう。
乗り越えるべき父親の権威は21世紀になっても存在するのか。香取たちの若いころは大人たちと戦って自由を手に入れてきたのに、香取たちが大人になってしまった今、妙に物分りがよくなって若い世代との衝突を避けている。夕食ルールはそんな香取が娘たちの前に築いた唯一の壁。詩織との交際の許可をもらいに来た充の前で、やっと香取は古い時代の父になることができる。娘に甘いパパではなく、形式主義の頑固オヤジ。自分が壁になれたことがうれしくもあり、娘の自立が寂しくもある。そんな父親の複雑な気持を三宅裕司は明るくリアルに演じる。
しかし、後半は展開が雑になる。香取が客の老夫婦の引越しを手伝いに行くと、そこに香取の家族や友人、香織のバンド仲間まで押しかける。さらに詩織と充もやってきて充の打つそばを香取に食べさせることでふたりの結婚を認めさせてしまうのだ。これではダシに使われた老夫婦の立場があるまい。さらに詩織たちの結婚式で突然香取夫妻の正式な結婚式も挙げてしまうという暴挙。緻密な構成を得意とする佐々部監督の作品とは思えない粗が見える作品だった。。。