こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

歓喜の歌

otello2008-02-08

歓喜の歌

ポイント ★★★
DATE 08/2/4
THEATER CQN
監督 松岡錠司
ナンバー 29
出演 小林薫/安田成美/伊藤淳史/由紀さおり
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


一生懸命に打ち込めるものがあってこその人生。定食屋、ウエイトレス、スーパーの売り子、ボランティア等、コーラスの女性たちの日常を肌理細かに描くことで、小さな楽しみを持つことがいかに生活にハリを与えるものであるかを描く。やる気もなく勤務時間の終わりを待つだけの主人公が、精いっぱい働きながらそれでも時間を捻出して歌うことに情熱を傾ける彼女たちの姿に打たれ自らの姿を省み、いつしか自分も夢中になっているという過程を通じ、「がんばる」ことに年齢は関係ないということを教えてくれる。


市営ホール運営係の飯塚は「コーラスガールズ」と「レディースコーラス」の大晦日コンサートをダブルブッキングしてしまう。調整に駆け回るが双方とも譲らず、合同コンサートという形で開催することになる。


市役所から左遷されてきた飯塚は万事やる気がなく、コーラスはオバサンの暇つぶしとタカをくくっている。だが、みな仕事を持っている「ガールズ」のメンバーたちの働く姿を見て彼女たちがどれほどコンサートを楽しみにしているかを知り、その夢を壊しかけた自分を反省する。忙しい主婦たちは決して仕事の愚痴をたれないが、飯塚は始終不満をこぼす。それは主婦たちにはコンサートという目標があり、飯塚には自分を奮い立たせる夢が何もないからだ。現状に満足できないのならそれを変えていこうという意思と、行動力が大切。飯塚はホールの事務所から外に出ることで徐々に変わっていく。


何事にも動じず飄々とした「ガールズ」のリーダー・五十嵐を演じた安田成美がこの作品を明るくしている。夢ばかり追って定職に付かない夫や介護の仕事、そしてコーラスと忙しさに目が回るはずなのに、決して疲れや不機嫌を表情に出さない。常に問題を解決しようとするポジティブさ。その笑顔は他の登場人物だけでなく、観客の心も和ませる。ただ、コンサート当日にリフォームにいちゃもんをつけてくる客のエピソードは、無理にヤマ場を作るためのようでまったく不要だった。


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