こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ペネロピ

otello2008-03-01

ペネロピ PENELOPE


ポイント ★★★
DATE 07/12/10
THEATER KT
監督 マーク・パランスキー
ナンバー 252
出演 クリスティーナ・リッチ/ジェームズ・マガヴォイ/ピーター・ディンクレイジ/リース・ウィザスプー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


醜い鼻と耳をコンプレックスとして隠すか、それを受け入れて自分らしく生きるか。その葛藤の答えは最初から分かっているのだが、母親の過剰な愛が障害となり回答を先に引き延ばす一方で、悪意ある人々が結論を急がせる。娘を守ろうという気持が不幸を呼び、カネのためにスキャンダルを追う者が結果的に自立を促すという皮肉。容貌で人を判断してはいけないといいながら、やはり人は見た目が9割という一般的な心理も含めて、ありのままの人間を否定しないスタンスが優しい。


魔女の呪いでブタ鼻ブタ耳を持って生まれたペネロピは、母親に人目に触れないように育てられる。成長したペネロピを結婚させるために母は求婚者を募るが、彼女の顔を見ると皆逃げる。ある日、カメラマンのレモンにカネで雇われたマックスがペネロピの元を訪れ、彼女を理解しようとする。


顔の美醜など、親や本人が気にしているほど回りは気にしておらず、一部で騒ぎ立てられることに本人が過剰反応しているだけ。素顔をさらしたペネロピが一躍人気者になったのは彼女の勇気を称えるだけでなく、オカルト的な由来が大衆の要求にマッチしたからだ。母からの自立と自己肯定、そしてそんな自分を受け入れてくれる他人、それだけで幸せに生きていける。


ペネロピの心をいちばん理解していたのは小人症のレモンだ。彼もまたその外見から差別を受けてきたことは容易に想像できる。レモンは逆に劣等感をバネに新聞社でのし上がってきた。だからこそ、己の分身のようなペネロピを見守り、彼女を世に出そうとする。カゴの鳥でいるより1人で人生を切り開く道を選ばせようとする意思は、ペネロピの母に片目をつぶされた怨み以上に強かったはず。幸福をつかんだペネロピのカメラを向けたレモンは、見かけの醜さから解放された彼女に嫉妬していたはず。自分の身長は決して伸びることはない、だが、そんな胸中を表に出さず静かに見守ることを選んだレモンに美しいダンディズムを感じた。


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