こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バンテージ・ポイント

otello2008-03-12

バンテージ・ポイント VANTAGE POINT


ポイント ★★★★
DATE 08/3/7
THEATER THYK
監督 ピート・トラビス
ナンバー 58
出演 デニス・クエイド/マシュー・フォックス/ウィリアム・ハート/フォレスト・ウィティカー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ニュースのライブ中継という手法で物語の設定を簡潔に説明する導入部、事件の現場に居合わせた人々の行動を再現することで実際にはどのような順序で何が起きたかを解明していく中盤の展開、さらには手に汗握るアクションの後、張り巡らされた伏線が一気に収束するラスト。敵味方双方に裏切り者が存在する多岐にわたる登場人物もうまく交通整理され、綿密に練られ効果を計算された脚本と緊張感あふれる演出に、一時もスクリーンから目が離せない。


対テロ会議にスペインを訪れた米国大統領が広場で演説中に銃弾に倒れる。シークレットサービスのバーンズは同僚のテイラーと共に狙撃手を捜すが、直後に爆発が起き、一方でテロ組織が送り込んだ凄腕の殺し屋が暗躍する。


偽装と嘘、そして相手の裏の裏をかくような周到さとわずかな隙からほころび始める計画。偶然が必然に与える致命的な影響と、それを見逃さない経験で培った勘と観察眼。彼ら高度に洗練されたスペシャリストたちは実行力とは裏腹に、それぞれに事情を抱えていて、どこか危うさを持つ。特に弟を人質に取られてやむを得ずテロに参加するヒットマンや、恋人に協力する地元刑事などの複雑な感情も繊細に描かれており、彼らの動機もきちんと説明しているところがすばらしい。それでもバーンズとテロ組織のリーダー・スワレスだけはその立場がしっかりとしていて、その他のキャラの「裏切りによるどんでん返し」も説得力がある。


テロ組織が大統領を拉致するのと並行して、バーンズは容疑者を追うが、彼の前には二重三重の罠とトリックが待ち構えていて、全体像を解明していく過程で上質なミステリーの様相を呈してくる。そこに緊迫の銃撃戦と、臨場感あふれる人ごみの隘路でのカーチェイスとサービス精神満載だ。あれだけ衝突すればエアバッグが開くはずとか米国から見た勧善懲悪の予定調和的な結末も、圧倒的な作品のパワーの前では瑣末なことに思えてくる。。。


↓メルマガ登録はこちらから↓