ポイント ★★
DATE 08/3/17
THEATER シネアミューズ
監督 エトガー・ケレット/シーラ・ゲフェン
ナンバー 66
出演 サラ・アドラー/ニコル・ライドマン/ゲラ・サンドラー/ノア・クノラー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
身の回りに次々と起きる小さな不幸が、思い通りにならない人生をさらにいらだたしいものにする。それでも必ず今日は昨日になり、明日は今日になる。そんな、運に見放されたような人々の日常を丹念に拾うことで、最後に希望を見出そうとする。しかし、エピソードにヤマ場が乏しく、淡々とした描写と抑えた感情、象徴的なシーンからは登場人物の熱意が伝わらず、3つの平行して進む物語がラストで有機的に結合するといった構成上の仕掛けもない。結果的に肌理細やかな映像が丁寧に綴られているだけという印象しか持ち得ない。
恋人にフラれたバティアはビーチで不思議な少女を保護するが、少女は一切語らない。フィリピン人介護士・ジョイは訪問先の意地悪な老婆に振り回される。新婚のケレンとマイケルは新婚旅行の代わりに滞在したホテルで謎めいた女と出会う。
バティアは離婚した両親との関係がいまだにギクシャクしており、それは子供のころの記憶が原因になっている。つまり彼女の前に現れた少女は5歳の彼女自身。それは口を利かない少女の年齢をバティアが知っていたことからもうかがえる。この少女を心配する気持ちを通じて、親の子への思いを知ったバティアは両親との仲を修復させる。バティアの心の整理がついたとき少女は海に消えるが、これは親の苦悩を理解できたということだろう。
ジョイは子供への土産と欲しがっていた船の模型を老婆からプレゼントされ、新婚夫婦は部屋を替わってくれた女性の自殺を機にゆっくりと話し合う時間を持つ。人間、生きていればいやなことのほうが多い、それでもくじけずにがんばっていればいつかはいいことがあり、自殺した女の詩のように「永遠に果てぬ苦悩」などこの世にはないのだ。そういった主張は理解できるのだが、この作品の描き方ではひとつの物語だけでは足りなかったので3つのストーリーをミックスしてみました、というような安易さが匂ってくるのが非常に残念だ。