燃えよ!ピンポン BALLS OF FURY
ポイント ★★
DATE 08/1/31
THEATER 映画美学校
監督 ロバート・ベン・ガラント
ナンバー 25
出演 ダン・フォグラー/クリストファー・ウォーケン/ジョージ・ロペス/マギーQ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
地下組織のボスが自分の楽しみのためにアングラ卓球トーナメントを開き、そこに密命を帯びた男が選手として参加するという、「燃えよ!ドラゴン」の設定をパクった卓球コメディだが、主人公はじめ登場人物のはじけ方がいまひとつで笑いの密度が低い。神業のようなラケットさばきでピンポン球を自在に操りスマッシュを決めるというようなところでは巧みにCGを使っているのだが、人の動きも球の動きもそれほど荒唐無稽というレベルではなく、作り手の目指している場所がよく分からなかった。
卓球の天才少年だったランディはしがない日々を送っていたが、FBIの依頼でフェンという中国マフィアの男が催す大会に出場するために競技を再開する。フェンは武器密造の疑いがあり、その証拠を押さえるためにランディはFBIエージェントともにフェンのアジトに赴く。
ランディが卓球のトレーニングを積むために中国人に弟子入りするという導入部は、すっかり落ちぶれた元五輪選手の日常と賭け卓球のうらぶれた世界が非常にテンポよく描かれる。特にマギーという女性プレーヤーが男4人相手にラリーをしながら電話で出前の注文をとる場面は圧巻。彼女を演じるマギーQの、長い手足と割れた腹筋を見せながらのしなやかな動きはこの作品のいちばんの見所だ。デブで冴えない男に成り果てたランディよりもよほど魅力的だった。
トーナメントが始まると映画は急にトーンダウンする。試合のシーンは多少カメラワークに工夫はあるもののオリジナリティがなく、ランディがせっかく五輪で敗れた因縁の相手と決勝戦で対戦するのに、なぜかマギーと戦わせる。その後もFBIの救出部隊が乱入したり、自爆装置を作動させたり、サドンデススーツを着たフェンと勝負したりと、オチを付けようと試行錯誤しているうちにアイデアばかりが先走りしたかのようにストーリーは破綻する。上質なコメディになりえた題材だったのに、脚本に緻密さが欠けたのは致命的だった。