こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

うた魂♪

otello2008-04-04

うた魂


ポイント ★★★
DATE 08/2/6
THEATER KT
監督 田中誠
ナンバー 32
出演 夏帆/ゴリ/薬師丸ひろ子/石黒英雄
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


風車がまわる海岸でひとり歌い、自分の声に陶酔する少女。美貌と美声に恵まれた彼女がその外見にこだわるあまり、歌の本質を見失い、自信をなくしていく。そしてどん底に落ちたとき、初めて他人の気持を思いやりことを知り、必死になって打ち込むことの大切さを知る。琴線に触れる歌を聞かせるには心をこめて歌わなければならない。映画はありふれた学園ものだが、自意識過剰ヒロインの精神的な成長と合唱の組み合わせが新鮮な上、周辺の登場人物配置もうまく、エピソードも簡潔で最後までテンションが落ちない。


七濱高校合唱部のかすみは憧れている牧村から「歌っているところの写真を撮らせてくれ」と頼まれ有頂天になるが、出来上がった写真を産卵中のシャケといわれて落ち込む。イメージを壊したくないかすみは、合唱部を止めると言い出す。


「私は歌っている私が好き」と言い切るかすみは、周囲の人にどう見られるかばかりを気にし、本当の自分が何者であるかに気付いていない。合唱コンクールで出合った不良風高校生が歌う尾崎豊の歌が下手なりに観客を感動させたことで、かすみは歌に必要な感情は魂の叫びであることを学ぶ。目立ちたがり立ったかすみは楽譜めくりからやり直すことで、思いやりも身につけていく。「表現することにビビッているやつに負けるわけがない」という言葉に誘発され、一生懸命に歌えば、たとえ大口を開けたシャケのようでも美しいことに気付く。


不良高校生たちがマンガじみていているが、そのあたりもコミカルに流すことでかえってドラマにリズムを与えている。特にゴリ扮するリーダーはまったく高校生には見えないが、歌について熱く語る姿はそんな違和感を吹き飛ばすパワーがあった。結局、合唱部に戻ったかすみは北海道予選に出場、七濱高校は優勝する。その後アンコールで会場を包む大合唱のエピローグ。ひとつ間違えばくさい演出になるところだが、適度なノリでうまくまとめられていて、非常にさわやかな後味が残った。


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