こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

モンゴル

otello2008-04-09

モンゴル


ポイント ★★
DATE 08/4/7
THEATER WMKH
監督 セルゲイ・ボドロフ
ナンバー 84
出演 浅浅野忠信/スン・ホンレイ/アマデュ・ママダコフ/クーラン・チュラン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


見渡す限りの大草原、雪と氷に閉ざされた冬、赤と茶色以外に色彩のない砂漠、緑深い森林とむき出しの岩場・・・。モンゴルの大自然の風景はその壮大な美しさとは対照的に、文明人を寄せ付けないような厳しさを併せ持つ。そこで、馬だけを移動手段にした遊牧民たちが信義と力を頼りに覇権を争う。映画は、チンギス・ハーンの少年時代からモンゴルを統一するまでの波瀾に満ちた前半生の細かいエピソードを積み重ねる。しかし、主人公が放浪や捕らわれの身になっている時間が非常に長く、クライマックスまで変化に乏しい物語が延々と続く。


9歳のテムジンは妻探しの旅に出て、ボルテという少女を将来の伴侶に選ぶ。その帰路、父が殺され村は略奪にあい、追われるテムジンは逃亡中にジャムカという少年に命を救われ、盟友の誓いを結ぶ。


テムジンの父は、部族の長といっても、日本でいえば「村長」くらいにしか見えず、移動のときも少数の護衛を連れているだけ。質素で所有物もほとんどなく、どちらかというと原始的な生活。そんな彼らがテムジン以降、なぜ中国から東欧に至る大帝国を打ち立てることができたのかの説明はない。テムジンがかつての盟友・ジャムカに捕らわれた上に奴隷として売られ、牢獄で見世物にされるという身分から、いかにしてジャムカの大軍に比する軍勢を味方につけたかという過程も省略される。そんな中、自分を夫に選んだボルテのために戦うという愛妻家としてのテムジン像が新鮮だ。


そして、命運をかけた合戦シーンは、雲霞のごとく見渡す限り大地を埋め尽くしたジャムカ軍を騎兵と弓矢でテムジン軍が迎え撃つ。斬られ、突かれ、射られた兵の体から血が玉になって弾け出す様子は迫力満点。だだ、テムジン側の射手がなぜか味方の突撃騎馬部隊にまで矢を浴びせているのはどういうことだろう。結局、天候が激変し雷を恐れたジャムカ軍は総崩れ、テムジンは大勝利を収める。だが、CGで描く天の怒りやそこで生きる人間たちよりも、前半の丁寧に撮影された四季折々のモンゴルのほうがはるかに心に響いてくる。。。


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