こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

NEXT−ネクスト−

otello2008-05-01

NEXT−ネクスト−

ポイント ★★
DATE 08/4/26
THEATER THYK
監督 リー・タマホリ
ナンバー 100
出演 ニコラス・ケイジ/ジュリアン・ムーア/ジェシカ・ビール/トーマス・クレッチマン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


自分に関する出来事の2分先を予知し、未来を変えることができる男。彼にとって未来は確定した運命ではなく、選択することでよりよい結果を得ることができるのだ。それゆえにその能力を悪用しようとする人間たちから身を守るために人目を忍んで生きている。公にはできず、かといって他に才能はない。主人公が細々とマジシャンとして生計を立てているといううらぶれた現実が悲しい。ならば、彼が超能力のせいで普通の暮らしができなかったというトラウマをもう少し描いてほしかった。


しがない奇術師として舞台に立っているクリスは毎日同じ女の幻覚を見る。ある日、FBI捜査官・カリーに米国を核攻撃から防ぐための協力を要請されるが、クリスは断る。そんな時、幻覚の女・リズと本当に出会ったことから、クリスは彼女を事件に巻き込んでしまう。


クリスは単なる妄想と2分先の未来をどのように区別していたのだろう。ギャンブルの結果や追っ手・危険の察知などは予知能力だが、何度も繰り返し頭に浮かぶリズとの邂逅は明らかに妄想。映画はいつしかこのふたつを混同してしまって、クリスがひとりのときは2分先、リズと一緒のときはもっと先の未来まで見通せるようになるというご都合主義。先住民のシャーマンと心を通わせるリズにも何らかの力、たとえば自分では何もできないが、誰かのそばにいるだけで他人のパワーを増幅させることができる能力があるのだろうか。そんなことにははまったく触れられていなかったが。


テロリストとの銃撃戦で、待ち伏せする敵を分身の術を使ってさまざまな未来を探るという手法には噴き出したが、カーチェイスや崖から大量の岩石木材などを降らせるシーンなどは視覚的な処理が非常に雑で、低予算映画を見ているよう。また、クリスを確保したFBIがテレビニュースを見せて爆発地点を特定しようとするが、分かったところで被害を食い止めることはほとんどできまい。さらに後半はすべてクリスの幻覚だったなどというありふれたオチも不快だった。

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