こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

相棒 劇場版

otello2008-05-06

相棒 劇場版


ポイント ★★*
DATE 08/5/1
THEATER WMMM
監督 和泉聖治
ナンバー 105
出演 水谷豊/寺脇康文 /木村佳乃/西田敏行
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


首吊り、毒殺、ひき逃げ・・・。連続予告殺人犯を追って2人の特命係の刑事が奔走する。そして最大のターゲットは3万人が走るという東京マラソン。犯人グループと刑事の虚虚実実の駆け引きとチェスを介在した頭脳戦、ひとつの謎を解くとまた次のハードルが待ち構えているという二重三重のトリック、意外な真犯人と葬られた事件の真相。映画はミステリーとアクションを程よく調合し、なおかつ自己満足で動くボランティアやマスコミの身勝手さに警告を発する。


SNSの処刑リストに載った有名人が次々と殺されていく。特命係の杉下と亀山は鍵になる女・やよいを事情聴取するが、彼女の兄は5年前にNGOの派遣先で地元ゲリラに拉致・銃殺されていた。その陰にはSファイルという政府の機密文書の存在があった。


過熱報道とすぐに忘れてしまう人々に対する憎しみ、命を奪われたボランティアの名誉を回復するための戦い。犯人らの動機は、それゆえに世間の耳目を集める必要があり、わざわざ警察を挑発するような遺留品を現場に残す。逃げきる気は毛頭なく、はじめから逮捕されることを念頭に置いた計画というのが余計に捜査の裏をかき警察を混乱させる。ただ、その過程で犯人側がインターネットやチェス、爆発物までに詳しいはずなのだが、そのあたりのディテール、たとえばやよいの父・木佐原が元チェスのチャンピオンだったとか学生運動の闘士だったとかいう過去に触れておいて欲しかった。


山場となる東京マラソンで杉原の解いたパズルを基に亀山は現場は走り回るのだが、それすらも犯人側の陽動作戦。このあたりから物語が急展開すると共に粗が見え始める。アジトを突き止められたからといって実行犯が自爆したり、さらにやよいまで道連れにする必要はないだろう。その後、木佐原が表彰式に現れた元首相を銃撃しようとして取り押さえられる。しかし、その逮捕すら真犯人の筋書き通りという3段構えの論法だ。もはやドンデン返しのためのドンデン返しで、やたらストーリーを複雑にしているだけ。もう少し大筋の構造をシンプルにして、犯人側のキャラクターを描きこんでいればドラマに奥行きが出たはずだ。



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