こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

隠し砦の三悪人

otello2008-05-18

隠し砦の三悪


ポイント ★*
DATE 08/5/12
THEATER 109KH
監督 樋口真嗣
ナンバー 112
出演 松本潤/長澤まさみ/宮川大輔/阿部寛
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


剣で斬られた体や矢で射られた傷口から鮮血が噴出し、大量の爆薬やCGを使った大規模な視覚的な見せ場には事欠かないが、そこで描かれる物語はご都合主義丸出しの安易な展開。しかも映像が暗くくすんでいる上にライティングが悪いために、ただでさえ土で汚れたメークをしている俳優たちの表情が読み取れない。あえて彩度や明度を落としているのかも知れないが、山の緑や空の青といったカラーを強調することで、戦国時代の身分の低いものがおかれた状態の悲惨さを表現できたはずだ。なにより人情の話に転換したのが失敗だった。


戦国時代、山名氏に滅ぼされた秋月氏の残党・六郎太と世継の雪姫は軍資金を手土産に同盟国・早川に亡命しようとしていた。山名陣を脱走してきた武蔵と新八は軍資金の分け前をもらうことを条件に、六郎太と雪姫の道案内を引き受ける。


百姓や庶民を搾取する侍に対する強烈な怨みと、世間を知らない姫の強情。本来六郎太が主人公の豪快な冒険活劇だったのが、武蔵を主人公にして雪姫とのふれあいなどという甘っちょろいテーマにしてしまったのがいけない。松本潤のためのキャラクター変更という路線がミエミエで、いくら雪姫が領民の生活に心を砕く人柄といっても下賤の部類の身分である武蔵に魅かれるなどということはありえない。だいたい、金掘り坑夫なら彼らが運んでいる軍資金が鉛であることをすぐに見分けられるはずだが。


一行は山名兵に捕らえられるが、武蔵の機転で砦を爆発させてその混乱の中で早川領に無事逃げ延びる。その際も、武蔵と雪姫は昇降機で地中深く落下するのに無傷、六郎太と新八にいたっては大火災になって崩壊する砦から燃え盛る炎をバックに馬で脱出するのだ。このシーンはもはや噴飯物。たびたび登場人物の口にのぼり、エンドロールでも歌われる「裏切り御免」というキーワード、この作品を見に来た観客の期待を裏切ったことへの言い訳なのだろうか。。。


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