こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハンティング・パーティ

otello2008-05-19

ハンティング・パーティ THE HUNTING PARTY

ポイント ★★★*
DATE 08/5/16
THEATER THYK
監督 リチャード・シェパード
ナンバー 117
出演 リチャード・ギア/テレンス・ハワード/ジェシー・アイゼンバーグ/ダイアン・クルーガー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


銃弾が飛び交い爆弾が炸裂する最前線をカメラマンと共に走り回るTVレポーター。紛争の現実を伝えるという使命より、死と隣り合わせの状況がもたらす昂揚感を楽しんでいるかのようだ。「危険に命をさらすのが生きるということ」と言い切る主人公にとって、戦場こそがもっともふさわしい居場所なのだろう。正義やカネのためというより、スリルと興奮を求めて火中に栗を拾いに行くイカレたジャーナリストをリチャード・ギアが好演。好奇心が人間を衝き動かす原動力であることが、彼の姿を通じて強烈に描かれる。


かつて戦争報道で名をはせたサイモンはサラエボで借金暮らし。そこへ元同僚・ダックが新人のベンをつれて戻ってくる。サイモンはダックに500万ドルの懸賞をかけられた戦犯・フォックスの居所を掴んだという情報をもってくる。


現場を離れて快適なオフィスで過ごすダックと、二言目にはハーバード卒をひけらかすベン。ダックは忘れていたいた血が騒ぎ、ベンは手柄ほしさにサイモンの話に乗る。3人はセルビア民兵組織がいまだ実権を握る山中に車で入るが、国連軍やフォックスの組織にまでCIAの暗殺部隊であると誤解される。それゆえに貴重な情報を手に入れたり命を狙われたりするのだが、そのたびに機転を利かせて切り抜ける。自分たちだけが重大なネタを知っているという優越感と銃を突きつけられる緊張感。どんなときもユーモアを失わないサイモンの余裕が、映画を堅苦しさから解放する。


国連組織の官僚主義と米国の二枚舌。サイモンらは追跡劇の過程で、本気でフォックスを捕まえる気がない国際司法機関の偽善を暴く。そして彼ら3人だけでフォックスを生け捕りにするのだが、その陰でサイモンの真の目的にも触れられる。サイモンにはフォックスに復讐する理由があったのだ。惨殺された恋人への愛、サイモンがただのアドレナリンジャンキーではないと証明することで、世界中で今なお止まぬ軍靴の足音が普通の人々の生活をいかに悲劇にするかを端的に語っている。


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