こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ランボー 最後の戦場

otello2008-05-28

ランボー 最後の戦場 JOHN RAMBO


ポイント ★★
DATE 08/5/24
THEATER WMKH
監督 シルヴェスター・スタローン
ナンバー 12
出演 シルヴェスター・スタローン/ジュリー・ベンツ/ポール・シュルツ/マシュー・マースデン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


森の木々の一部となり、土や岩と同化する。近づいてきた敵に気配を悟られることなくナイフで喉を切り裂き、音を立てる間もなく止めを刺す。ランボーとは本来、熱帯雨林を我が家のように熟知し、そのあらゆる自然の特性を利用する殺しのプロフェッショナルだったはず。しかし、再びジャングルに戻ってきたにも関わらず、特殊部隊で培った能力を発揮することなく、ただ夜陰に乗じてゲリラ戦を行い、夜が明けると機関砲をぶっ放すだけ。火薬と銃弾に頼った大味なB級アクション映画になってしまった。


ビルマの反政府系少数民族を支援するボランティア団体を紛争地域に送り届けたランボーは、彼らが政府軍に拉致されたことを知る。救助のために傭兵部隊が送り込まれるが、政府軍小隊が住民をなぶり殺しにしているところに出くわし、ランボーは得意の弓矢で一瞬にして小隊を殲滅、傭兵部隊を率いることになる。


地雷や迫撃砲が手足を引きちぎり、銃創から血しぶきがほとばしる。さらに牛刀で首や手足を叩き斬ったりと、血生臭いシーンはやたらとリアリティがあり、原形をとどめていない死体の山が築かれていく。それは現在ビルマで起きている政府軍によるカレン族弾圧の実情を訴えているのだろう。非武装の村を襲い、男は殺し、女はレイプしてから殺し、子供は兵士として再教育する。民主化運動と共に、徐々にその少数民族問題が海外メディアに触れる機会が増えているビルマを舞台にするタイムリーな感覚とは裏腹に、描かれるのは時代錯誤的な殺戮風景ばかりだ。


トラウトマン大佐亡き今となっては、ランボーの怒りを制御できるものはなく、一度殺しの本能に火がついたランボーは政府軍兵士をシューティングゲームのようになぎ倒す。戦いに勝っても沈んだ表情のままのランボーは、再び血で手を染めたことへの後悔が心をよぎっているかのよう。ラスト、故郷の牧場に戻ったランボーの憑き物が落ちたような後姿の安堵感は、もう二度と武器を手にしないと誓った証なのだ。


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