こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Mr.ブルックス

otello2008-05-31

Mr.ブルックス MR.BROOKS

ポイント ★★
DATE 08/3/18
THEATER KT
監督 ブルース・A・エバンス
ナンバー 67
出演 ケビン・コシナー/デミ・ムーア/ウィリアム・ハート/デイン・クック
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


勤勉な実業家で理想的な父親という表の顔と、殺人依存症の冷酷なシリアルキラーという裏の顔。ふたつを使い分けながらも、徐々に裏の顔を支配する心の声の言いなりになってしまう。本能を抑えて生きるのか、欲望を実現させなくてよいのか、そんな誘惑にいつしか屈してしまう主人公。しかし、彼を殺人に導く別人格を具現化させ幻覚に実体を与える手法は陳腐な上、物語も目撃者や女刑事、脱獄囚や一人娘などが絡み、盛りだくさんにしすぎて整理がつかなくなっている。


ビジネスマンとして成功したアールは2年ぶりに殺しを復活させるが、カーテンを閉め忘れたことから犯行現場をスミスと名乗る男に撮影され、脅迫される。その内容は次回の殺人の現場に立ち合わせろというものだった。


殺人鬼の一面を持つことに対してはまったく罪悪感を感じていないのに、一人娘が自分の血を引いた人殺しであると知ったときのアールの狼狽振り。甘やかして育て何でも与えてきたのに、親の期待を裏切った娘に対して、強く出られない父親の苦悩。自分より、娘と娘のおなかにいる赤ちゃんの将来を心配する。愛する娘が殺人鬼になったことを恐れている父親の姿がリアルだ。そのあたりの感情が、娘に殺される夢に象徴される。アールは、殺人者とビジネスマンの人格が入れ替わってもほとんど差がないのが不気味だった。


映画は、アールを追う一方で脱獄囚に命を狙われるトレイシーという女刑事の離婚訴訟なども絡めているが、結局アールとトレイシーは直接対決することなく、最後に携帯で短い会話を交わすだけ。一見無関係な要素が伏線になるのがこういったミステリー仕立ての作品には不可欠なのに、この作品にはそういった工夫がほとんどなく、行き当たりばったりにエピソードをつなぎ合わせた感じが否めなかった。


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