こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

築地魚河岸三代目

otello2008-06-18

築地魚河岸三代目


ポイント ★★*
DATE 08/6/14
THEATER WMKH
監督 松原信吾
ナンバー 142
出演 大沢たかお/田中麗奈/伊原剛志/森口瑤子
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


義理人情に威勢のよさ、いまだに昔気質が強く残る鮮魚仲買人。非情のビジネス界で生きてきた男が、損得勘定よりも信用を重視する人間関係の濃い世界でいかにして認められるか。スーツにネクタイのサラリーマンがハチマキにゴム長という彼らの制服に着替えて、そこで生きる決意をする。映画は主人公とその恋人、彼女の家族の秘密を通じて、いまや希薄となった他人を思いやる心を描く。出生の秘密を隠し続け少し陰のある男を井原剛志が好演。単細胞ばかりの市場関係者の中で異彩を放っている。


商社勤務の旬太郎は、恋人の明日香が実家の魚仲買店で働く姿を見て手伝いを申し出る。その後、会社のリストラ策に嫌気がさした旬太郎は辞表を出して、明日香と結婚して中卸を継ぐ決意。必死に奈って働くが、店のリーダー格の英二が思わぬ告白をする。


築地という巨大市場を舞台にしながら、その息遣いのようなものがあまり伝わってこなかったのが残念。もっと売買のシステムや駆け引きなど、ふだん素人が目にすることができないような裏側まで見せてほしかった。せっかく旬太郎という部外者を語り部にしているのだから、彼の目から見た築地市場の実態という描き方をしてもよかったはず。今後シリーズ化するならなおさらきちんと知識として知っておきたかった。


旬太郎は魚の商売を知らなくても味覚は敏感で、舌で魚を見分ける能力を持つ。さらに網元に押しかけ修行に出て、生きた魚の扱い方を教えてもらう。このあたりの行動力は非常にさわやかで、後に英二の恋にまで口を挟むなどちょっとおせっかいなくらい。まだまだ大沢たかおは背広姿のほうが似合ってるが、これから魚河岸のオッサンを演じるに当たって泥臭い所作も身に付けていくのだろう。一作目としてはややインパクトにかけるが、今後に期待したい。


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