こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

奇跡のシンフォニー

otello2008-06-23

奇跡のシンフォニー AUGUST RUSH


ポイント ★★★
DATE 08/4/8
THEATER スペース汐留
監督 カーステン・シェリダン
ナンバー 85
出演 フレディ・ハイモア/ケリー・ラッセル/ジョナサン・リース=マイヤーズ/ロビン・ウィリアムズ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


心の耳を澄ませば、風や雷そして光までもがメロディを紡ぎだし、大都会の雑音もリズムを伴ったハーモニーに変換される。世の中に氾濫するあらゆる音に旋律を見出す少年が、ミュージシャンとして成功する過程でバラバラになった家族を再び引き合わせる。音楽の無限の可能性と強烈な引力、映画はその美しさが人生すら変える力を持つことを丹念に描く。「信じ続ければ願いはかなう」という命題を言葉ではなく行動で示す主人公の姿は、ファンタジーにリアリティを与えている。


孤児院で暮らすエヴァンには特殊な音感ある。ある日、何かに呼ばれるように孤児院を抜け出したエヴァンはニューヨークにたどり着き、そこでストリートミュージシャンを仕切るウィザードという男に拾われる。


初めて手にしたギターで弦を叩くように演奏したり、音階の基礎を学んだだけで鍵盤楽器を自在に操るエヴァンは、おそらくモーツァルト級の神童。11歳でジュリアード音楽院に入学すると初めて書いたシンフォニーがNYフィルのコンサートに取り上げられる。彼はその才能に戸惑うわけでもなく持て余したりもしない。それは、自分は音楽を通じて両親と通じ合っているという頑な思いがあるから。その確信の根拠となるような小道具やエピソードがなく、わずかにエヴァンも、彼の母・ライラも別れてからの日数を数えているというのが共通点なのには不満が残る。天才とは理解を超えた存在といいたかったのだろうか。


ライラと父・ルイスの現在も同時進行する。2人とも一夜限りの逢瀬の後、音楽をやめ、今は地味な生活を送っている。ライラが生き別れた息子がいると知ったことから物語は動き始め、くすぶっていたルイスの魂にも火がつく。やがて、運命の糸を手繰るように2人はエヴァンのコンサートに導かれていく。このあたりの展開は先が読めてしまいまったく意外性はないのだが、予想通りに進行するストーリーは期待を裏切らずかえって心地よい。それは、作品中に使われた生きる喜びを表現するような音楽が、見ているのものの感情にダイレクトに届くからだ。。。


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