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映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

西の魔女が死んだ

otello2008-06-25

西の魔女が死んだ

ポイント ★★★
DATE 08/6/21
THEATER THYK
監督 長崎俊一
ナンバー 148
出演 サチ・パーカー/高橋真悠/りょう/木村祐一
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


みずみずしいまでの緑に囲まれた山奥の洋館、そこは隅々まで手入れが行き届く一方で、森の動物や植物の生命の息吹が濃厚に感じられる。現実世界とは思えないようなおとぎ話の舞台、一歩踏み入れた瞬間からヒロインの少女同様、魔法にかけられたような錯覚に陥る。食事の用意をし、畑の作物やニワトリの世話をし、空き地で深呼吸をする。ただ毎日を規則正しく過ごしているだけなのに、太陽の光や自然の恵みに感謝したくなる。そんな気持ちを心に芽生えさせるかのようなカメラが非常に美しい。


学校になじめず登校拒否になったマイは、おばあちゃんのもとで暮らすようになる。おばあちゃんはイギリス人で魔女の家系の出だという。マイはおばあちゃんの予知能力の話を聞き、自分も魔女になれるよう修行を志願する。


マイのすべてを受け入れ、マイを褒め、マイが生まれてきて存在しているだけでうれしいということをいつもマイに伝えるおばあちゃん。母親から「扱いにくい子」といわれて傷ついていたマイは、自分を肯定してくれるおばあちゃんにたちまちなついていく。甘やかすのではなく、きちんと言葉と態度で「愛している」とはどういうことかを身をもって示すおばあちゃん。笑顔と明るさを取り戻していく過程で、マイは命の大切さとはかなさについても学んでいく。死とは、魂が肉体を離れるけれど決して無になるものではなく、魂の成長のためには肉体は必要というおばあちゃんの哲学が、マイに生きる勇気を与える。


だが、近所のゲンジをなぜ不審者のように描くのだろう。ゲンジは、やさしくしてくれたおばあちゃんをよそから来た娘に取られたと思ったからマイに冷たくしたのだ。マイの目にはゲンジが憎むべき相手に映るのは当然だが、おばあちゃんが説明すれば二人の間の誤解も解けたはず。魔女の予知能力も、人の気持ちまで動かす能力はないのだから、これはおばあちゃんの手落ちだ。まあ、ゲンジとの和解も、おばあちゃんがマイに残していった宿題かもしれないが。。。


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