こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

闘茶 〜tea fight〜

otello2008-07-11

闘茶 〜tea fight〜


ポイント ★★*
DATE 08/4/24
THEATER スペース汐留
監督 王也民
ナンバー 98
出演 香川照之/戸田恵梨香/エリック・ツァン/ヴィック・チョウ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


あくまで茶の効能を重要視する中国人と、茶を精神世界への架け橋のように考える日本人。もちろん茶の香りや味、泡の見た目などの美しさも評価されるが、中国人が欲しがるのは茶が肉体的精神的にもたらす高揚感やその逆の鎮静作用といった健康に寄与する力。日本人は茶を点てるという行為自体に美を求め、茶を味わうこことはその一部でしかない。中国では実用品であった茶が、日本で独自に作法や芸術として昇華していった過程を通じて、その良し悪しを比較することの無意味さを説く。


その昔、中国では雄黒金茶と雌黒金茶は最高の茶といわれていたが、雄派が雌派を滅ぼす。その後、台湾に渡った雄派の末裔・ヤンは雌派の生き残りを探していたが、京都の茶葉店の娘・ミキコが雌派の茶葉を持っていると知って台湾に呼び寄せる。


プロローグのアニメが新鮮だ。幻の銘茶・黒金茶の由来と日本との因縁を簡潔に説明し、なおかつ水墨画風に描かれた人物風景が中国趣味。一方で落ち着いたたたずまいを見せる京都の古い町家はいかにも日本風。どうせなら闘茶の舞台もすっかり近代化された台北はなく、どこか名刹のようなところで古式にのっとって開催してほしかった。


やがてミキコを人質に取ったヤン一味に、雌派の血を引く如花とミキコの父も加わり、日中間で闘茶が行われる。しかし、日本の茶道と中国の茶芸はかみ合わず勝負は空回りする。中国茶日本茶を比べるのはそもそもテニスと卓球を比べるようなものだ。それどころか、最初はミキコが茶をひいていたのにいつの間にか父と選手交代しているという始末。このあたり物語よりも、茶の師匠が言うように「闘茶とは己と向き合うこと」であって「自分との戦いに勝ち負けはない」ということを主張したかったのだろう。結局、長年の仇敵であった雄派と雌派は和解して最強の中国茶となり、ミキコは父と共に老舗茶屋を復活させる。展開は多少強引で荒唐無稽なところもあったが、エリック・ツァン扮する茶の精のような男が物語の要所で軌道修正してくれるので、最後までダレることはなかった。


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