こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

あの日の指輪を待つきみへ

otello2008-07-18

あの日の指輪を待つきみへ CLOSING THE RING

ポイント ★★★*
DATE 08/4/21
THEATER 松竹
監督 リチャード・アッテンボロー
ナンバー 97
出演 シャーリー・マクレーン/ミーシャ・バートン/クリストファー・プラマー/スティーブン・アメル
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


頻繁に入れ替わる現在と過去、徐々に明らかにされていく謎と秘密。戦争で命を散らした恋人を思い続ける老婆と、その恋人が息を引き取る直前に託した彼女への思い。そして頑なに心を閉ざして生きてきたヒロインが最後に自分の誤りを知って、再び愛する気持ちを取り戻す。ミシガン州の田舎町とアイルランドベルファスト、大戦中と50年後、ひとつの愛を巡ってバラバラだった運命の糸がより合わさるように真実という一点に集約していく。その語り口は、ロマンスとミステリーに少しの暴力の要素を加えた絶妙のバランスで、最後までスクリーンから目が離せない。


第二次大戦中ベルファストの丘に墜落した爆撃機の残骸から金の指輪を掘り当てたジミー。指輪の持ち主はミシガン州に住むエセルという年老いた女性で、それは彼女の恋人だったテディとの愛を証だった。


テディの死後、エセルは彼の親友・チャックと結婚してマリーという娘をもうける。しかし、エセルのテディへの気持ちは変わらず、チャックはエセルに愛されることなく死んでしまう。マリーはそんな母親が許せず、ジミーがはるばる運んできた指輪をきっかけに、父を愛さなかった理由を知りたがる。燃えカスのようなエセルをずっと見守ってきたチャックの心中はいかばかりか。映画では描かれていないが、戦後のチャックは死ぬまでテディの幻影に苦しめられていたに違いない。


アッテンボロー監督は英国人らしく北アイルランド紛争もストーリーに取り入れ、甘ったるい思い出の中のラブストーリーだけに終わらせない。戦時中から続く宗派対立はIRAによる爆弾テロに受け継がれ、ジミーと彼の祖母、さらにエセルまで巻き込まれる。ただ、IRAとテディとの関係が物語の核心に触れるもものではなく、せっかくの要素が生かしきれていないのが残念。たとえば九死に一生を得たテディがIRAのテロリストとして生まれ変わり、自分が仕掛けた爆弾でエセルを死なせてしまう、くらいのひねりが欲しかった。。。


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