こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

崖の上のポニョ

otello2008-07-21

崖の上のポニョ

ポイント ★★
DATE 08/7/19
THEATER 109KH
監督 宮崎駿
ナンバー 175
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


5歳の息子が両親を名前で呼ぶという異様な光景。我が子に自分たちのことをお父さん・お母さんという呼称ではなく、親がそう呼ぶように躾けたのだろう。親子の間に親密さが生まれるのかも知れないのだが、そこには決して年長者に対する尊敬は生まれないはず。交流を絶つことで平和を保ってきた人間と海の生物との関係に、海の女神の娘が人間になりたいと願うことで均衡が破れ、街は水没し社会は崩壊に向かう。そのストーリーは、幼児が親を呼び捨てにするような道徳の廃れた世など存在に値しないという意図ならば納得するのだが。。。


海中船に住む魚の子が家出、ジャムの壜に頭を突っ込んで動けなくなっているところを宗介という保育園児に救われる。宗介は魚をポニョと名づけ飼う決意をするが、ポニョの父・フジモトが海底から現れ彼女を連れ戻す。


小さな赤い魚たちが黒く大きなうねりに変化し、津波となって宗介たちの街を襲う。それはポニョの掟破りに対する大いなる海の怒り。しかし、ポニョは宗介や彼の母によって無理やり人間界の虜になったのではなく、あくまで「宗介が好き」という自らの意思でやってきたのだ。また、宗介たちが暮らす港街も海に依存して繁栄しているのだから、海を愛しているはず。その街が水害に襲われたときのフジモトの行為は何を意味するのか。娘の気持ちを掴みきれないからといって、無関係な人に八つ当たりしているようにしか見えない。


崖の上の家に孤立した宗介とポニョは、小さな船で宗介の母がいるケアハウスに向かう。途中、疲れ果てたポニョは眠りに落ち、彼女がかけた魔法が解け、体も元の魚に戻っていく。そこで海の女神が現れて、宗介とキスすることでポニョは人間になり、街から水も引いていく。地球温暖化や貧困問題などの説教くさいメッセージ性がないのは好感が持てるが、宗介とポニョの冒険を通じて理解できたのはお互いへの思いやりの気持ちだけだ。まあ、5歳の子供が小難しいことを考えていたらかえって不気味だが、もう少し大人の鑑賞に耐えられる内容がほしかった。


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