こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

GATE

otello2008-07-24

GATE

ポイント ★★
DATE 08/7/21
THEATER THYK
監督 マット・テイラー
ナンバー 176
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


広島を焼き尽くした炎を絶やさず燃やし続ける平和への執念が米国人の琴線に触れ、原爆の悲劇を60年の年月を経て始まりとなった場所で終わらせる。ひたすら真夏の太陽の下を歩く僧侶たちの目的を知り、無償の支援やお布施をする人々の姿に、世界の警察として紛争地域に派兵する米国も市民レベルでは戦争にうんざりしている人々がたくさんいることを教えてくれる。願い、祈るだけでなく、行動することが共感を呼び、大きなうねりとなって政治すら動かす。純粋な善意が動機の行為は必ず賛同者が現れるのだ。


05年7月、サンフランシスコから史上初の核実験が行われたニューメキシコ州のトリニティサイト目指して日本の僧侶たちが行脚を始める。彼らの手には原爆投下直後の広島で採取された「原爆の火」が握られ、その火をトリニティサイトで消すことで核の軍事利用という負の円環に終止符を打とうとする。


大戦末期の米軍の無差別爆撃が多数の民間人を殺傷したことで反米感情を抱いている宮本という住職が、灼熱の道路を進むうちに次第に米国人への反感を解いていく。漠然としたイメージで描いていた「悪い米国人」という先入観が、実際に旅先で交流していくうちに笑顔で接するようになっていくのだ。しかしカメラはあくまで傍観者で、僧侶たちの内面まで踏み込まない。彼らの悟りを開いたような毒のないコメントや建前よりも、本音を引き出す工夫がほしかった。


また、一行は25日間で2500キロの道のりを踏破したというのは本当だろうか。単純に計算して1日平均100キロ。時速7キロの速歩でも毎日15時間近くかかるのだ。僧侶の中にはガンで胃を全摘出したものもいる。いくら鍛えているといっても、ほとんど装備を持たずわらじ履きでこれほどの距離を進めるはずがない。絶対に途中でキセルしているはずだ。そのあたりも正直に描いていれば、彼らの行軍はもっと共感を呼んだに違いない。


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