こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ドラゴン・キングダム

otello2008-07-25

ドラゴン・キングダム THE FORBIDDEN KINGDOM

ポイント ★★*
DATE 08/6/11
THEATER 松竹
監督 ロブ・ミンコフ
ナンバー 139
出演 ジャッキー・チェン/ジェット・リー/マイケル・アンガラーノ/リー・ビンビン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


雲に乗った猿が高い山の頂で長い棒を振り回して暴れまわるという、なじみの深い孫悟空の世界にいきなり観客を誘う。それは今まで何度も映像化されてきた孫悟空とよく似ており、本場の中国人が演じているのにも関わらず日本製の孫悟空と変わりばえしないところにかえって違和感を覚えてしまう。なぜ、誰も見たことのないような孫悟空像を創造しなかったのだろうか。米国人にはこのほうが受けるのかもしれないが、日本で見るとジェット・リー香取慎吾の二番煎じに見えてしまうところが非常に惜しい。


ボストンの質屋で如意棒を見つけたカンフーオタクのジェイソンは、突然、圧政に苦しむ中国にタイムスリップする。そこで知り合ったルー・ヤンという道士から、如意棒を元の持ち主である孫悟空に返せば自分がいた時代に戻れると教えられる。


ジャッキー・チェンがはまり役の酔拳を見せればジェット・リーは切れ味鋭い棒術を見せる。彼らに加え、復讐に燃える女拳士や銀髪の女殺し屋、さらに幻術を使う将軍などが入り乱れて大活劇を繰り広げるのだが、ワイヤーアクションやVFXなどの視覚効果はもはやアイデアが尽きたのか、斬新さは感じない。このあたり、格闘シーンをリアルにしすぎるとファンタジーの要素が薄れ、逆に香港映画風にしすぎるとジャッキー・チェンの作品を多数見たものには新鮮さに欠けるというジレンマ。なにかひとつでいい、ここでしかなしえなかったオリジナリティのあふれる表現方法を見てみたかった。


ジェイソンはルー・ヤンに弟子入りし、カンフー修行をしながら五行山に向かう。その間、無言僧や金雀といった仲間が加わり、一行は苦難の旅の果てに石像となった孫悟空のもとにたどりつく。しかし、カンフー界の両巨頭に圧倒的な存在感があるために、肝心の主人公・ジェイソンに存在感が希薄。そもそも彼の成長物語なのに、エピローグで現代に戻るまで主役の座は「おあずけ」状態だ。ジェイソンを演じたマイケル・アンガラーノにとって少し荷が重かった。


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