こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

LOOK

otello2008-09-13

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ポイント ★★★
DATE 08/7/30
THEATER 映画美学校
監督 アダム・リフキン
ナンバー 184
出演 ジョゼッペ・アンドリュース/リス・コイロ/スペンサー・レッドフォード/ヘザー・ホーガン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


テロ予防の名目のもと、あらゆるところに設置されたビデオカメラが市民の日常を監視し記録する。それは犯罪抑制と偽証を明らかにする傍ら、無防備な他人の生活を覗き見するという趣味の悪さも感じさせる。安全のためにプライバシーを差し出すという流れは加速され、人々は見られていることに不感症になる。映画はすべてのシーンがモニターの映像で構成され、さながらドキュメンタリーの様相を呈する。そこで隠し撮りされた人間たちが赤裸々な素顔をさらけ出していく過程を通じて、権力に悪用されたときの「管理社会」の恐怖を予感させる。ただ、録画されたドラマはやや設定が大げさで、もう少しリアリティを持たせて欲しかった。


米国のある地方都市、高校、ショッピングセンター、ガソリンスタンド、保険会社など、全コミュニティにレンズの目が光っている。先生を誘惑する女高生、女子社員にセクハラを繰り返すマネージャー、サボってばかりのコンビに店員、同僚にいじめられるダメ社員などの姿がコンピューターに残されていく。


カメラは神のごとくあまねく人びとの暮らしに遍在し、目を光らせている。何も隠せず、決して騙すことはできない。女高生が更衣室で尻の穴を見せ合ったり、デパート店員が勤務時間中に倉庫でセックスに励んだりと行動が筒抜けだ。さらに、ビジネスの話をしていた男性弁護士2人がエレベーターに乗ったとたんにキスをするなど、人間の裏の顔を知る密かな愉しみを教えてくれる。カメラはそんな「見つかっていない」という油断を決して見逃さない。その上で、こちらが見ているのを相手は知らず、彼らの秘密を握っているという心理的な優位感をもたらしてくれる。そんな観客の下世話な虚栄心を監督は見事に衝く。


一方で、カメラは警官殺しの強盗の顔を映したり、レイプ告発の虚偽を証明したりと、不法行為の解決に役立っている。だが、幼女誘拐犯の手がかりはつかめないまま。犯罪防止という題目を追い風に、更なるカメラの増設が進んでいくことを予感させるラストが怖ろしい。


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