こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

コドモのコドモ

otello2008-10-01

コドモのコドモ

ポイント ★★*
DATE 08/7/11
THEATER 映画美学校
監督 萩生田宏治
ナンバー 167
出演 甘利はるな/麻生久美子/宮崎美子/谷村美月
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


性の知識がない子どもが、いきなり受胎する。セックスに対する興味というレベルではなく、ただ、仲良しの男の子と性器をくっつけてみただけ。それがどういうことなのか当然知らず、結果には思いもよらない。やがて膨らみ始めたおなかに大人は気付かず、頼りになるのはクラスメートだけ。映画は、小学校5年生の少女の妊娠をきっかけに、命の尊さと友人のありがたさを知る過程を描く。裏にあるのは物分りの悪い大人への不信感。しかし、その割には大きな障害もなく赤ちゃんは生まれてくる。むしろあっけらかんとしたトーンの中で、出産をこれほどまで軽く扱っていいものかと心配になる。


春菜は優等生でも不良でもないごく普通の小学生。ある日、幼なじみのヒロユキと弾みでやってしまう。後に、性教育の授業で自分たちの行為の意味を教わり、生理も止まって着床を知るが、姉の友人が中絶を知って、春菜自身は産む決心をする。


先生や両親は春菜の変化にただ太ったくらいの認識しかない。まあ、11歳の女の子が妊娠するという可能性ははじめから頭にないのだろうが、最初から何が起きているのか理解しようとしないのだ。母親たちも単体ではいい人なのに、PTAといった集団になると都会から来た若い女教師につらく当たる。そんな大人を尻目に、リーダー格の美香が中心になって春菜に分娩させようとしてクラスを団結させる。このあたりの「大人を出し抜いて子どもたちだけでやり遂げる」というプロットのワクワク感。ファンタジーと分っていても応援したくなる。


ただ、春菜がわが子の命を大切に思い、クラスメートたちも一丸となってバックアップするという構図は美しいが、後のことは何も考えていないのが気になる。結局、春菜が学校に戻っているのは、赤ちゃんの世話は母親任せということ。ヒロユキも東京に転校し、父親の役割から逃げている。小さな恋の物語というのならば甘いラストでもよいのだが、この作品は命をテーマに扱っているのだ。きちんと子育ての環境が行き届いている中での出産は、もちろん慶事ではあるが、現実に起こりうる困難には目を伏せ、赤ちゃんの誕生と成長という明るい部分にだけスポットを当てるというのは無責任ではないだろうか。。。


↓その他の上映中作品はこちらから↓