こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

消えたフェルメールを探して

otello2008-10-07

消えたフェルメールを探して

ポイント ★★*
DATE 08/8/28
THEATER アップリンク
監督 レベッカ・ドレイファス
ナンバー 208
出演 ハロルド・スミス/グレッグ・スミス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ただれた肌に右目のアイパッチ、鼻は人工のシリコンという、皮膚がんの後遺症が強烈なインパクトで出会った人々すべての心をとらえてしまう絵画探偵。美術界の表だけでなく裏の裏まで知り尽くし、果てはギャングにまでコネを持ち、盗難にあった名画の在りかを突き止めていく。情報を募り、ふるいにかけ、これはという提供者には直接会って話を聞き、さらなる手がかりをつかもうとする。映画は失われたフェルメールの作品を主人公が探す過程をフィルムに収めるうちに、さながら上質のミステリーのような趣をかもし出す。


1990年、ボストンのガードナー美術館からフェルメールの「合奏」をはじめとする絵画が盗まれる。警察の捜査は遅々として進まず、美術館は500万ドルの懸賞金をかけて情報を募る。映画ディレクターであるレベッカ・ドレイファスは絵画探偵ハロルド・スミスにその捜索を依頼する。


マスコミを利用して懸賞金を広報したとたんに留守電に吹き込まれたガセネタの山。その中からわずかな真実を探り出そうとする途方もない作業とともに、裏事情に詳しいものを一人づつ当っていく。ハロルドの粘り強い説得に重い口を開く者、自分を必要以上に大物に見せようとする者、証言が変わる者など、みなひと癖ありそうな連中ばかり。それそれに思惑がありそうだが、おそらく目的はカネ。人間の心を和ませるアートも、一皮むけば欲望丸出しのビジネスに変わりないという核心を鋭く突いている。


やがて、ボストンを牛耳るマフィアのボスから、IRAの支持者にまで容疑者の網は広がる。さらに米国とアイルランド外交問題にまで発展しかねない勢い。もはやここまえ来ると、泥棒もうかつには売れず、絵はどこかに塩漬けにされているとハロルドは推測する。劣悪な環境に置かれ絵が傷むことを最も心配しているのだ。結局、解決の糸口になるような情報は得られないままハロルドは他界する。それとともにディレクターも捜索を止めるのだが、なぜ独自に調査しようとしないのだろう。ハロルドの死で、フェルメールの名画の捜索を映画自体が投げ出してしまったのような印象を受けるのは残念だった。


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