こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

私がクマにキレた理由

otello2008-10-14

私がクマにキレた理由 THE NANNY DIARIES

ポイント ★★★
DATE 08/8/22
THEATER 映画美学校
監督 シャリ・スプリンガー・バーマン/ロバート・プルチーニ
ナンバー 203
出演 スカーレット・ヨハンソン/ローラ・リニー/アリシア・キーズ/クリス・エヴァンス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


自分では子育てを一切せず、ナニー(子守り)を召使のようにこき使うセレブ妻。働かず、チャリティとショッピングとビューティにしか関心がなく、家事も当然メイド任せ。そして使用人を見下した高慢さ。NYアッパーイーストサイドの高級アパートで暮らす上流階級の女性を演じるローラ・リニーの、魔女の女王様のような鼻持ちならない態度が絶妙。映画は、彼女に雇われたナニーの目を通して、カネで買えるモノは何でもあるけれど愛だけはないという虚飾の世界を描く。高級ランチ、無添加食品、お受験そして自分がルールという金持ちの非常識な日常が滑稽だ。


大学は卒業したものの就活に失敗したアニーは、ミセスXの息子・グレイヤーのナニーに雇われる。早速住み込みで働き始めるが、予想とは大違いのハードワーク。同じアパートのハーバード学生とのデートだけが彼女の楽しみとなるが、ミセスXに邪魔される。


大学で勉強したことなど実社会では何の役にも立たないことをビジネススーツに白いソックスというダサい格好のアニーで象徴させたり、博物館のジオラマでNY人種の生態を簡潔に紹介する導入部分は洗練されたウィットを感じさせる。その一方で、勝ち組と負け組がはっきりとしている社会や、子供の安全を守るために雇い主が監視カメラを仕掛けるなど、米国の抱えている問題も扱うことでリアリティを持たせるなど、アニーの気持ちに共感できるようなエピソードで物語にアクセントをつけている。


仕事と愛人にしか興味がなく家にはたまにしか帰ってこない父親、子育ての方針には細かく注文するが自分では何もしない母親、そのしわ寄せを一身に受けるが生活のために文句が言えないナニー、そして両親の愛情に飢えた子ども。アニーはXファミリーでの体験をもとに奨学金を得て大学院に進学する。高学歴ワーキングマザーは子育てをナニー任せにする傾向にあるのだから、数年後のアニーも我が子のためにナニーを雇うはず。そうなったとき、アニーは自分の体験を忘れてナニーをこき使うような母親になっていそうな気がするのは、スカーレット・ヨハンソンのノーブルな顔立ちのせいだろうか。。。


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