こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

僕らのミライへ逆回転

otello2008-10-17

僕らのミライへ逆回転 BE KIND REWIND

ポイント ★★
DATE 08/6/27
THEATER 映画美学校
監督 ミシェル・ゴンドリー
ナンバー 154
出演 ジャック・ブラック/モス・デフ/ダニー・グローヴァー/ミア・ファロー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


映像を通じて何かを表現したいなどという目的ではなく、過去の作品からエッセンスを凝縮して楽しむだけ。安っぽければ安っぽいほど手作りの味がして、かえってオリジナルにない味わいを生み出す。紙製のライオンキングやミニカーを使ったMIBのカーチェイス、さらに宇宙船の回転ポッドなど、特殊効果にカネをかけられないゆえに生まれたローテクアイデアが大いに笑わせてくれる。それは機能ばかり洗練され刺激が強調されるハリウッドへのアンチテーゼ。ミシェル・ゴンドリー監督は身をもって特撮やCG・デジタルサウンドなど虚飾にまみれた映画に対して一線を画すことを宣言する。


トレーラー住まいのジェリーはレンタルビデオ店のマイクを手伝ううちに、店内のビデオをすべて再生不能にしてしまう。仕方なく自分たちで同じような映画を取り直すと、常連客に大受け。2人はアルマという女優を加えて、名画を片っ端からリメイクしていく。


店は再開発地域に指定され立ち退きを迫られている。それでもいまだにVHSを使い続けている人のために貸し出しを続けている。時流から完全に取り残された存在。進歩とは対極にあるような登場人物を通じて、経済成長至上主義に対すして警鐘を鳴らす。彼らが撮り、レンタルするビデオが大人気を得るのも、まだまだ世の中にはデジタル化から取り残され20世紀的なアナログを懐かしむファンが多いことの象徴。そして、著作権侵害として有無を言わせず彼らのビデオを廃棄する、模倣こそ芸術の源という考え方を否定する弁護士の冷たさが、映画をビジネスとしか考えない風潮に釘を刺す。


ただ、ジャック・ブラックがジェリーを演じることでこの作品自体が下品になってしまった。マニュアル化され個人情報が蓄積される現代と違い、ちょっと昔を思い出し人間の持つソフト面が大切にされていた時代へのオマージュを語るのなら、もう少し繊細な雰囲気を持った俳優に演じさせるべき。また、彼が感電して磁気を帯びるようになったことが後半にまったく生きてこないことにも不満が残った。


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