こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イーグル・アイ

otello2008-10-24

イーグル・アイ EAGLE EYE


ポイント ★★
DATE 08/10/18
THEATER THYK
監督 D・J・カルーソー
ナンバー 254
出演 シャイア・ラブーフ/ミシェル・モナハン/ロザリオ・ドーソン/ビリー・ボブ・ソーントン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


自分の過去はすべて知られ、現在は支配され、未来は定義される。正体不明の電話の声が言うとおりに物事が起き、いくら逃げてもその目はから隠れられず、命令に背くことは許されない。まるで他人に運命を操られているかのような不快感が、やがて怒りに変わっていく。映画は、人間の行動や会話を監視しコントロール下に置いたコンピュータが反乱を企てるというアイデアに、派手なカーチェイスやミステリーの要素を加えて、息もつかせぬアクションの連続で見る者を思考停止状態にする。


コピー店の店員・ジェリーは双子の兄弟・イーサンの葬儀から戻ると突然FBIに逮捕される。しかし、謎の女からの電話に救われ、レイチェルという女が運転する車に乗り込む。レイチェルもまた謎の女の声に従わざるをえない状況で、2人は仕方なく協力関係を結ぶ。


電話の声の主・アリアは全米の通信や防犯カメラの映像、ネットワーク上のパソコンの情報をすべて蓄積し瞬時に判断を下せるという全知全能のスーパーコンピュータ。彼女の計画にイーサンと同じ遺伝子構造のジェリーの体を必要としたわけだが、なぜFBIまで巻き込むほど大げさな騒ぎが必要なのか。アリアがその力をジェリーに見せつけて無駄な抵抗をやめさせるためなのはわかるが、もっと穏便な手順を考えるだろう。また、ジェリーとレイチェルに強盗を働かせるが、あれほど危険な目に逢って守り通したスーツケースに入っていたのは注射器とはいかがなものか。普通に輸送機に用意させておけば済んだはずだ。さらに、堅牢な要塞のアリア基地にどうしていとも簡単にFBIの侵入を許したのか。


このアリアというスーパーコンピュータは単にアホなのか失敗作に違いない。そんな脚本の致命的な欠陥を、大がかりなクラッシュやのスピーディな追いかけっこで補うという演出プランは一応成功している。だが、高慢さだけでなく恐怖や怒りといった感情を持つHAL9000と比べると、アリアの効率の悪さは隠しきれない。メモリを壊されても歌いださなかったのは救いだったが。。。


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