こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウォー・ダンス

otello2008-11-02

ウォー・ダンス

ポイント ★★*
DATE 08/8/13
THEATER シネマート
監督 アンドレア・ニックス・ファイン/ショーン・ファイン
ナンバー 194
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


単純な構造の木製打楽器、弦楽器、吹奏楽器、それぞれが祖先から代々受け継がれてきた素朴な音色を奏でる。力強いステップと上半身を大きく使うダンスがアフリカの魂を全身で表現する。そして、腹から声を絞り出すことで生きる喜びを歌に込める。内戦で荒れ果てた故郷を離れ、難民キャンプで過ごす子供たちが「全国音楽大会」出場の過程で、厳しい訓練に耐えながらより高いレベルを目指す。リズムを刻む彼らの姿は、そのまま未来への希望を象徴するかのように躍動感に満ちている。


アフリカ・ウガンダ北部の紛争地域、パトンゴ難民キャンプにある小学校が歌唱・楽器演奏・舞踏の各部門で全国音楽大会に出場を決める。ほとんどの子どもたちは反政府軍によって親や兄弟といった家族を殺されている。彼らは音楽に打ち込むことで悲しい過去を乗り越えていく。


大きな口を開けて歌う子供も、笑顔で踊りに興じる子供も、一心に楽器を演奏する子供も、なぜかみな矯正したように歯並びがよく、ホワイトニングしたように真っ白な歯をしている。濃い褐色の肌と絶妙のコントラストをなし、その美しさは彼らが置かれている現状を忘れてしまいそうだ。おそらく国連の援助で栄養状態も衛生状態もいいのだろう。健康的な子供たちを見ていると、悲惨な体験は事実だったのだろうかと疑いたくなるほどだ。


ある少女は反政府軍に父を殺された上に母は陵辱され、いまは母親とも疎遠になっている。ある少年は拉致されて農夫を殺すことを命じられて実行する。彼らの心に刻まれた深い憎しみと恐怖。それゆえたいていの刺激には不感症になっている。そんな彼らが音楽に接しているときだけは人間らしい感情を取り戻していく。全国大会本番、パトンゴの少年少女は部族の誇りをかけたパフォーマンスを披露する。ただ、そこに至るまでの練習風景の中に厳しさや辛さがあまり描かれていなかったのが残念。音楽に賭ける熱意なのか難民となった少年少女の実態なのか、テーマに対するフォーカスをもう少し絞り込むべきだった。


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