こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ブタがいた教室

otello2008-11-04

ブタがいた教室

ポイント ★★*
DATE 08/11/1
THEATER WMKH
監督 前田哲
ナンバー 267
出演 妻夫木聡/原田美枝子/大杉漣/田畑智子
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


手塩にかけて育てたブタを、食べるべきかその世話を後輩たちに引き継ぐべきか。クラスの意見は二分し、結論は課題を出した担任に委ねられる。はじめから「一年後に食べる」という前提で飼い始めたにもかかわっず、子どもたちは餌をやり糞尿の始末をしブラシをかけるうちにすっかり情が移り、ブタを愛してしまう。問題を先送りにしようとする者は殺すのはかわいそうと訴え、きちんと食べてやるのが責任の取り方という者も本当は殺したくないと涙を流す。1頭のブタをめぐって延々と繰り返される感情論と理論。その中で生きるということは他の生き物の命を頂くことでると学んでいく。


6年2組担任の星先生は、命の大切さを実感させるために学級全員でブタを飼うことを決める。子どもたちはブタをPちゃんと名付け、慣れない作業をこなしていく。父兄の反対も説得し、やがてPちゃんはクラスの仲間として認知されていく。


とどのつまり、ブタはペットか食料かということ。素性を知らない豚の肉は食べられるけれど、愛情をかけたブタの肉は食べられないというご都合主義が「引き継派」の本音。自分たちが飼い始めたブタだから卒業後に他人任せにせず食べるのがPちゃんの命を真に受け継ぐことというのが「食べる派」の理屈。しかし、星先生は彼らに決めさせようと議論が過熱してもほとんど口出しをしない。クラスの意見が13対13と真っ二つになって険悪な空気が漂い始めても高みの見物をするような態度。問題を提起しながら結果は子供任せというのは少し無責任すぎないか。最初に「食べる」と宣言したのだから、その方針に沿って指導していくべきだろう。


そして卒業式が終わり、星先生の最後の一票でPちゃんの食肉センター行きが決まる。Pちゃんを乗せたトラックを子供たちが追うシーンで映画は終わるが、星先生も子供たちもPちゃんの肉を食べたのだろうか。結局「食べる派」も屠殺・解体を業者に任せて責任から逃げている。やはり都会の小学生には少し荷が重い命題だった。もちろん若い先生にとっても。。。


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