かけひきは、恋のはじまり LEATHERHEADS
ポイント ★★
DATE 08/11/8
THEATER THYK
監督 ジョージ・クルーニー
ナンバー 273
出演 ジョージ・クルーニー/レニー・ゼルウィガー/ジョン・クラシンスキー/ジョナサン・プライス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
革製のヘルメットにジャージ素材のユニフォーム、選手は泥まみれになってグラウンドを走り回る。1920年代、まだアメフトのプロリーグが創設されて間もないころの雰囲気が非常によく再現されている。それだけではなく、登場人物のクラシカルなファッションや様々な小道具、立ち居振る舞いに至るまで当時の空気を鮮やかなカラーで彩り、洗練された映像に仕上げている。だが、そこで繰り広げられるのはゲームのような軽い恋。ドタバタ喜劇という古臭いスタイルがジョージ・クルーニーの魅力を殺している。なぜ自分で自分の首を絞めるような演出をしたのだろうか。
アメフトのプロ選手・ドッジはチームを立て直すために、戦争の英雄でカレッジフットボールの花形・カーターをスカウトしようとシカゴに向かう。そこでカーターに密着取材中の女性記者レクシーと知り合うが、実はレクシーはカーターのスキャンダルを暴こうとしていることをドッジは知る。
大学の公式戦は超満員の観客を集めているのに、プロは閑散とした客席の前でボールの調達さえままならないほど資金に困っている。カーターが導入した戦術でチームが連戦連勝しだしたところをみると、競技レベルもプロより学生のほうが上だったに違いない。そのあたりのアメフト創生期の苦労をもっと深く描けば物語に奥行きが出たはずだが、レクシーを巡ってドッジとカーターがさや当てを演じる。しかし、肝心のレクシーがそれほどチャーミングでないのが致命的。まだ女性の社会進出が未熟だった時代、バリバリ仕事をこなすレクシーを必要以上にセクシーに描く必要はないが、2人の男から同時に惚れられるようには見えない。当時はセクハラに耐えタバコ吸う女は輝いて見えたのか。
そしてクライマックスの試合、ドッジが敵となったカーターとの決着をつけるために考えた作戦も、ユニフォームを泥だらけにして相手チームのプレーヤーになり済ますという幼稚さ。このシーンに象徴されるように笑いのセンスがことごとくずれていた。