こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ディー・ウォーズ

otello2008-11-27

ディー・ウォーズ D-WAR

ポイント ★★
DATE 08/10/16
THEATER ソニー
監督 シム・ヒョンレ
ナンバー 252
出演 ジェイソン・ベア/アマンダ・ブルックス/ロバート・フォスター
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


高層ビルに巻きついて咆哮する大蛇は「キング・コング」、道路にあふれる車が吹き飛ばされ街が破壊されるシーンは「インデペンデンス・デイ」や「クローバーフィールド」を思わせ、さらに鎧に身を包んだ悪の兵団が恐竜のような動物に大砲を背負わせて進軍する場面は「スター・ウォーズ」を彷彿させる。500年に一度龍が蘇るという朝鮮の昔話に過去のハリウッド超大作のエッセンスをまぶし、デジタル処理された壮大な視覚効果と音響で息もつかせぬアクションを展開する。


レポーターのイーサンは大爆発現場で龍の鱗を発見、幼いころに聞かされた昇龍伝説を思い出す。彼は龍に命を捧げる運命を背負ったサラ見つけ出すが、悪の勢力がサラの身柄を狙ってブラキという大蛇を街に放つ。


長い体をくねらせてサラを追うブラキを、なぜあれほどまで凶暴そうな外見にしたのだろう。もっと死人のような表情のない目で淡々と襲いかかってきたほうが恐怖感も出たはず。感情が読めない怪物のほうが存在感が増すのだが、余りにも直裁に邪悪さを描きすぎている。その一方で、空を覆わんばかりの大軍で攻めてくる翼竜は、戦闘ヘリに撃ち落とされながらもいつの間にか対処法を身につけて、ヘリを撃墜するなど奮闘を見せる。イーサンがサラを守るというストーリーなど二の次、これでもかと繰り出される悪の軍団と米軍との戦闘の映像に、後半は思考停止になる。


やがてサラはブラキの生け贄として捕らえられ、まさに危機一髪というときに善の大蛇・イムギが天から舞い降りてくる。そこでサラは自分の体をイムギに託し、イムギは龍となってブラキを倒す。だが、その大蛇と龍が絡み合いかみ付き合いながら戦うクライマックスは、細密なCGアニメのようになってしまってまったく温かみが感じられない。もっとサラの自己犠牲やイーサンとサラの前世からの因縁と愛の軌跡をきちんと描いていれば、文字通り「画竜点睛」となったはずだ。


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