こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

青い鳥

otello2008-11-29

青い鳥


ポイント ★★★
DATE 08/9/30
THEATER KT
監督 中西健二
ナンバー 237
出演 阿部寛/本郷奏多/太賀/荒井萌
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


静謐な時間の中で圧倒的な存在感を示す先生は、おそらく彼自身吃音でいじめられた経験を持っているのだろう。いじめたほうは忘れても、いじめられたほうの心の傷は決して癒えない。だからこそいじめたほうも後悔しているのならば一生自責の念を持ち続けて欲しい。それは彼の願いであり、いじめにあったすべての子どもたちを代弁しているのだ。過去を清算したことにする学校・生徒・父兄に対し、ただ1人その記憶を風化させまいとする先生の孤独な戦いの中で、被害者に対するほんとうの贖罪とは何かを問う。


代用教員として中学に赴任した村内先生は、いじめが原因で自殺未遂・転校した野口の机を教室に戻させる。その学校ではクラス全員に反省文を書かせたことで事件に終止符をうとうとしていたが、村内は執拗に生徒たちに野口を思い出させようとする。


「ベストフレンズ運動」「青い鳥BOX」といった見せ掛けの友情や親切を奨励し、先生たちは建前はすばらしい学校を作り、生徒たちもうわべはいい子を演じている。そこでは誰かを嫌いになるという個人的な感情すら「いじめにつながる」といって否定される。生徒たちはそんな偽善を見抜いている。先生たちも世間体からやめるわけにはいかない。そんな「仲良し学園芝居」を村内は正面から反対して、いじめた側が苦しみぬくことがいじめられた者に対する責任の取り方だという真実をあぶりだしていく。


やがて、いじめの犯人と名指しされた生徒だけでなく、数人がお仕着せではない自分の本心を反省文を書き始める。それはまるで、沈黙と長回しが多用されるこの映画の余白を埋めるかのような言葉の奔流。村内は、野口いじめに加担したひとりである園部の呵責を吐き出させることで、いじめた側も救おうしているのだ。しかし、このままでは野口にもいじめた側にも禍根が残るだけ。せめて園部だけでも野口に直接会って謝罪する機会を与えてやるべきではないのか。生徒の気持ちをかき回すだけかき回して去っていく村内は満足なのかもしれないが、問題提起だけでなく何らかの解決策を生徒と一緒に探ってこそ教育者だと思うのだが。。。


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