こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト

otello2008-12-04

ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト SHINE A LIGHT

ポイント ★★*
DATE 08/10/1
THEATER KT
監督 マーティン・スコセッシ
ナンバー 238
出演 ザ・ローリング・ストーンズ/クリスティーナ・アギレラ/ジャック・ホワイト/バディ・ガイ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


マーティン・スコセッシという米国映画界の巨匠ですら手におえないザ・ローリング・ストーンズの強烈なわがまま。打ち合わせどおりにステージを作り撮影機材を据える場所を客席に確保したのに、直前になってミック・ジャガーから横槍が入る。スコセッシはやきもきするがミックと連絡は取れない。彼らが歌う曲目すら決定せず、ますますスコセッシの苛立ちは募る。そんな彼の苦労を知ってかしらずか、ミックは次々と決定事項にけちをつけ始める。ライブの撮影に入る前のスコセッシの苦悩が一番の見所だ。


06年秋、ニューヨークでおこなわれたザ・ローリング・ストーンズのライブをスコセッシが映画化する。会場にはクリントン元大統領の家族や知人も大勢訪れ、客席のボルテージが沸騰、ミックが歌い始める。


よくある記録映画のように、遠景からステージを捉えるのではなく、客席やステージ脇、さらにクレーンまで使った数台のカメラでストーンズの魂をとらえようとする。アップやロング、流れるような動き、カメラは縦横無尽に動きまわり、熱唱するミックの姿をさまざまな角度から余すことなく収めてしまう。この映画の主題はあくまでこのライブを臨場感と立体感のある映像とサウンドに記録すること。過去のフィルムの挿入を最小限に抑えているのでライブの流れを途切れさせることはなく、ナレーションでの解説もない。見るものはストーンズの「現在」をじっくりと観察し、ライブに熱狂することができる。


演奏後ステージから楽屋に引き上げるキースをカメラは追うが、カメラはいつの間にか彼を追い越して楽屋の外に出る。そして「up,up」という声と共に上空に舞い上がり、最後はマンハッタンを俯瞰する。この間のワンショットにスコセッシの遊び心があふれているが、あまたのカットをつなぐ編集という作業を通じて、コンサートですらひとつの物語にしてしまうスコセッシ流映画術の神髄が余すことなく込められたていた。


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