こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ブロークン・イングリッシュ

otello2008-12-06

ブロークン・イングリッシュ BROKEN ENGLISH

ポイント ★★*
DATE 08/9/18
THEATER アスミック
監督 ゾエ・カサベテス
ナンバー 227
出演 パーカー・ポージー/メルビル・プポー/ジーナ・ローランズ/ドレア・ド・マッテオ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


仕事は有能、友人に恵まれ、夜の相手にも事欠かない。だが、本当に愛せる男はなかなか見つからないというリアルな悩みを抱えるNYのアラフォー独身キャリアウーマン。それは本人や周囲の人が思っているように「男運が悪い」のではなく、直感が信じられず行動に移せないだけなのだ。彼女は強迫観念に縛られるかのようにデートとセックスを繰り返し、心の空白を埋めようとする。結婚はしたいが妥協はしたくない、運命の出会いを信じるほど若くはないが消去法で選びたくない。そんなわがままがもう通用しないことは分っている。映画は彼女の日常を通じて、恋することの手軽さと愛することの困難を描く。


恋人探しに余念がないノラは映画俳優に食事に誘われてそのまま彼の部屋までついていく。カノジョになったつもりだったのに、俳優には恋人がいることが分り消沈。その後もいわくつきの男ばかりと付き合う。ある日、パーティでジュリアンと名乗るフランス人に声をかけられる。


ノラはジュリアンとデート中に急に苛立ちを爆発させるが、それだけ普段は感情を抑えているのだろう。やっとフィーリングが合うジュリアンともときめいたりする様子もなく、どこか覚めている。さまざまな男と体を重ねることで、もはや期待を抱かなくなったからなのか。帰国間際、せっかくジュリアンがプロポーズしても断ってしまうノラ。結局、キャリアを積み上げることで考えが保守的になり、自分で自分の可能性を狭めているのだ。


やがて、本心に正直になったノラは仕事をやめて親友と共にパリに行く。そしてあてもなくジュリアンを探し回るのだが、そこでノラと関わるフランス男たちの親切なこと。皆紳士的で、彼女を励ましアドバイスを与える。このあたりは米国女性のパリ幻想か。しかも、ジュリアンが見つからず、あきらめてNYに帰ろうとしたら地下鉄で偶然再会する甘ったるいラスト。しかし、ここでも胸が弾むような描き方ではなく、あくまでカメラは距離を置く。恋愛映画なのに熱くない、これこそノラがいい男と結ばれない原因ではないか。ウディ・アレンジュリー・デルピーならば、もっとセンスのいい作品に仕上がったはずだ。。。

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