こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

TOKYO JOE

otello2008-12-07

TOKYO JOE

ポイント ★★
DATE 08/10/22
THEATER KT
監督 小栗謙一
ナンバー 258
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


頭部に3発の銃弾を撃ちこまれても生き永らえた男。日系人でありながらも裏社会の幹部に上り詰めたにもかかわらず、組織に切り捨てられた報復にFBIに協力する。いかなる環境で生まれ、何ゆえギャンブルに手を染め、どういう過程を経て非合法組織に身を投じ、そして裏切ったのか。映画は彼を知る数少ない生存者のインタビューと資料映像で、シカゴマフィアに壊滅的打撃を与えたTOKYO JOEことケン・エトーの半生を振り返る。だが、公判での証言の代償として証人保護プログラムを受け、残りの人生を人目を忍んで生きなければならなかったために、本人に関する資料が少なく、思い出話に終始する。


FBIによる一斉捜査を前に、大幹部から呼び出されたエトーは、2人の殺し屋に車の中で処刑される。しかし、銃弾は奇跡的に脳を逸れ、エトーは一命をとりとめる。エトーを逮捕・保護したFBI捜査官エレインは彼に取引を持ちかけ、マフィア上層部の犯罪を詳らかにする。エトーの証言でドンや大部分のボス、警察上層部、裁判官、果ては州知事までが逮捕される。


膨大なアーカイブの中から、エトーの両親の記録を見つけ出し、20世紀初頭の日系人移民の暮らしの厳しさを偲ばせる。エトーの父は教育者・宗教家として非常に厳格で、エトー自身は14歳で家を飛び出した挙句各地を転々としたのちラスベガスでカードのイカサマ術を洗練させる。後にシカゴに流れ着き、いつの間にかマフィアの構成員となって頭角を現すが、その時期のエトーを知る人間が極端に少なく、ほとんど不明。実の弟もエトーとの交流はなく、彼のインタビューからはエトーの人間像の輪郭は結べない。


やがて公判の席で黒い頭巾で顔を隠したエトーが、法廷内のギャングを前に自分の知っていることをすべて話す。特に銃撃を受けたときの証言は生々しい。さらにエトー暗殺に失敗した殺し屋は組織に消されるという厳しい掟も白日の下にさらされる。その後、別人となったエトーがどんな余生を送ったのか。それを知る人間のインタビューがあれば、もう少し作品に幅が出たはずだ。


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