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映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

特命係長 只野仁 最後の劇場版

otello2008-12-09

特命係長 只野仁 最後の劇場版


ポイント ★★
DATE 08/12/6
THEATER WMKH
監督 植田尚
ナンバー 296
出演 高橋克典/櫻井淳子/西川史子/秋山莉奈/赤井英和
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


表向きは窓際係長、その正体は会社に降りかかるトラブルを引き受け人知れず解決する裏のスゴ腕仕事人。大きな黒縁めがねとだぶだぶのスーツでOLや同僚に馬鹿にされている主人公が、めがねをはずして黒いコートに着替えたときに見せる圧倒的な強さは男の変身願望をかなえてくれる。しかも実は女をとろけさせるテクニックも一級品とあれば、まさに平凡なサラリーマンにとっての夢の世界。しかし、原作のテイストをそのまま維持しようとするあまり、非常に安っぽい作品に仕上がってしまった。


電王堂が仕掛けるイベントのイメージキャラに選ばれたタレントのシルビアを狙う犯罪予告書が届けられ、彼女を守る特命が黒川会長から只野に下る。シルビアの付き人として調査するうちに只野はシルビア誘拐計画に気づき、バックに犯罪組織の影がちらつき始める。


リアリティを一切排して事件の謎解きよりもご都合主義に徹するが、これでは深夜にテレビで放映されるドラマならいざ知らず、真剣にスクリーンに向かって鑑賞しようという気にはならない。それでも、稚拙とも思える設定や強引な話の運び方、登場人物の臭い芝居と安っぽい演出はある種の潔さを感じる。薔薇の花弁を指でくすぐって女を悶えさせたり、おもちゃの飛行機を飛ばしてみたり、あえてテレビと同じようなものを作り、さらに過剰なベタさと古臭いお色気で見に来た客に安心感を与えようという姿勢。だが、映画化にあたってのプラスアルファが只野とチェ・ホンマンの対決だけというのは少し寂しい。


やがてシルビアが誘拐され、只野は彼女を追うが、その陰謀は同じ電王堂の人間が仕組んだという真相。自分の出世だけを考えてまじめに働く社員の足を引っ張る男に只野は鉄槌を下す。そのあたりサラリーマン社会にもありそうなことなのだが、実際に殺人で手を汚したりはすまい。山西という男が只野と飲むシーンで「プライドを持って仕事をしている」というセリフを口にするが、この映画の作り手たちははたしてプライドを持って仕事をしたと思っているのだろうか。。。


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