こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

地球が静止する日

otello2008-12-22

地球が静止する日 THE DAY THE EARTH STOOD STILL

ポイント ★★
DATE 08/12/19
THEATER 109KB
監督 スコット・デリクソン
ナンバー 308
出演 キアヌ・リーブス/ジェニファー・コネリー/キャシー・ベイツ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


侵略でもなく、友好でもなく、その目的は地球を人類から守ること。多様な生態系をもつ我々の星は、はるかに文明の進んだ宇宙人から見ても美しい魅力にあふれているのだろう。いや、「我々の星」という思い上がりを打ち砕くことこそ彼の真意だ。地球はそこに暮らすあらゆる生物・無生物の共有財産。それを勝手に汚染し消費し独占しようとする人間たちに対して大いなる警鐘を鳴らす。しかし、少なくとも彼らの一部は80年前には地球に到着していたわけだから、もっと早く警告してくれてもよかったはずだが。。。


大きな光の球体がセントラルパークに着陸、生物学者のヘレンをはじめ科学者・技術者が召集される。米国防総省は球体から現れた異星人を射撃した上に確保し尋問にかける。異星人はクラトゥと名乗り人間の外見で英語を話すが、超能力で簡単に脱走、傷の手当てをしたヘレンと合流する。


クラトゥを守るために現れた戦闘マシーンの造形が素晴らしい。赤い眼が頻繁に動き、まるで人間の悪意を見透かしているように不気味に光る。無機質ながら圧倒的な威圧感で見下すような視線は、天に唾する人間に対する神の怒りを具現化しているようだ。その一方で、主戦論しか唱えない国防長官の芸のなさ。「二つの文明が遭遇したとき、劣るほうは滅ぼされるか奴隷にされる」という理論は正鵠を射ているが、宇宙人はもはやその段階を卒業していることを理解すべきだろう。彼女の頭の悪さはブッシュ政権のネオコン一派を象徴するようで不快だ。


やがてクラトゥは数十年前から人間として地球で暮らす仲間と合流する。彼は、地球人としての人生は幸福だったとクラトゥに告げる。泣き、笑い、怒り、喜ぶ、そんな感情の変化に富んだ人間的な営みは高度に発達したクラトゥの星にはないのだろう。それでも地球の暮らしが気に入っていたというのは、地球人レベルの精神活動をしていた時期があったということ。そのあたりを否定的にとらえていないところが後味が良い。ただ、この男の力で地球の環境問題が声高に叫ばれるようになる前になんとかできなかったのだろうか。


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