ワールド・オブ・ライズ BODY OF LIES
ポイント ★★★
DATE 08/12/20
THEATER THYK
監督 リドリー・スコット
ナンバー 309
出演 レオナルド・ディカプリオ/ラッセル・クロウ/マーク・ストロング/ゴルシフテ・ファラハニ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
尾行・張り込みといった地味な調査から、盗みや銃撃戦まで命がけで現場をはいずりまわる男。時には味方に足を引っ張られたりもする。信じられるのは自分だけなのに、身を守るための嘘も許されない。テンションあふれる映像からは、謎に包まれた人物を探すために奮闘するエージェントの胸の鼓動が聞こえてくるかのよう。土と汗、時には血にまみれた諜報活動は臨場感満点で、殺人マシーンではない生身の肉体を持った彼の行動は絵空事ではないリアリティをかもし出す。
欧州各地で起きる爆弾テロの首謀者を探すCIA工作員のフェリスは、そのアジトがヨルダンにあるという情報を得る。ヨルダン情報組織の幹部・ハニに気に入られたフェリスは協力を得て監視を続けるが、上司のホフマンに足を引っ張られヨルダンを追放される。
今やテロ組織はハイテク監視網を逃れるために、パソコンやケータイを一切使わず、原始的な連絡方法をとるために摘発が難しくなっているという。かつてのハリウッド映画のように、テロリストが電話をかけただけで居場所がピンポイントでばれるということはない。上空の偵察機の目をごまかすために数台の四駆で砂埃を立てて目くらましをするシーンなど、素朴な方法ほど有効であると教えてくれる。また、コンタクトは常に人を介するゆえに、人間としての信頼が問われる。それを十分に承知しているフェリスは人たらしの天才。テロ組織のリーダーをおびき出すために新たな架空のテロ組織をつくり、爆破事件まで偽装する。そのあたり、嘘の規模が大きいほど世間も騙しやすいというゲッペルスの理論は現代でも健在のようだ。
ただ、ラッセル・クロウ扮するホフマンは何のために出てきたのだろう。現地民の感情など省みず安全な場所から家族の面倒を見ながら命令だけを出すだけのメタボおやじ。写真と報告書でしか現状を見ない高官が世界の安全保障を左右してる様は、ブッシュ政権のイラク政策を皮肉っているのはよくわかるが、これほどの出番を与えるほど役柄ではない。彼のキャラクターにもうひとひねりほしかった。