こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

K-20 怪人二十面相・伝

otello2008-12-25

K-20 怪人二十面相・伝

ポイント ★*
DATE 08/12/23
THEATER 109KH
監督 佐藤嗣麻子
ナンバー 311
出演 金城武/松たか子/仲村トオル/國村隼
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


全身黒装束に仮面、マントを翻して狙ったお宝を盗み出す。一方で変装の名人として他人になりきることも得意。近過去の日本、身分が固定された社会で二十面相は盗みを通じて何をなそうとしていたのか。そのあたりの物語の作りこみが不十分で、CGに頼ったレトロ風の街並みばかりが印象に残る。現代日本の格差社会への強烈な批判であることは明白なのだが、窃盗や破壊行為に走るしか能がないのはどうしたことだろう。結局、日本は戦争で負けるしか社会を根本的に変えることができないということなのか。


サーカスの花形・平吉は探偵・明智と財閥令嬢・葉子の結婚式の盗撮を依頼される。当日、式場に忍び込んだ平吉はしくじり、二十面相として逮捕される。仲間の助けで脱獄、泥棒として生きる決意をするが、そんな時、本物の二十面相に襲われている葉子を発見し救出する。


ビジュアルのディテールに比べ、ストーリーの詰めの甘さはなんなのだ。平吉が自分を救った恩人である泥棒たちの前で悪態をつくと思ったら、後に泥棒長屋にすんなり迎え入れられたり、指名手配写真が街中に張ってあるにもかかわらず、素顔をさらしたまま街を走り抜けたりする。第一、公安の目をそらすために二十面相は平吉を身代わりに仕立てたのならば、もう二十面相の姿に戻る必要はあるまい。なぜわざわざ葉子を脅すようなことをするのだろうか。


その後の展開も行き当たりばったりで、世紀の発明である無線送電装置「テスラ」を手に入れるためにさまざまな謎を解いていく過程にまったく説得力がない。さらに二十面相の正体が意外な人物だったというアホみたいなオチがつく。そもそも二十面相は「テスラ」を手に入れた後、それをどのように使いたかったのか。勃発しつつある核戦争を防ぐために米ソのミサイル基地を攻撃するというのなら理解できるが、彼は世界中の主要都市を破壊しようとするだけだ。もっと、「バットマン」のような独特の世界観を作り出さなければ、目先の変化だけでは退屈は禁じえない。


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