GOTH
ポイント ★★
DATE 08/10/31
THEATER 映画美学校
監督 高橋玄
ナンバー 266
出演 本郷奏多/高梨臨/松尾敏伸/柳生みゆ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
まるで百貨店のショーウインドウにディスプレイされたような無機質な美しさを持つ手首なし死体。今にも動き出しそうなほど躍動感が残っているのに目は死んでいる。オブジェとして人々の目につくところに放置し、猟奇的な部分よりも芸術的な一面を強調することで、犠牲者に生きていた時以上の存在感を与えている。フォーカスを甘くした逆光の映像は幻想的な雰囲気を醸し出し、死に異常な関心を持ちなぜかそれを美化する高校生の奇妙な感情をシンボライズする。憧れなのか恐れなのか、命なき肉体への興味は彼ら自身も持て余しているようだ。
猟奇殺人に惹かれる樹は同好のクラスメート・森野という女子と仲良くなり、変わり者が集まる喫茶店でデートを重ねる。ある日、ふたりは森野が拾った手帳に連続殺人の記述が詳細に残されているのを発見し、まだ警察がつかんでいない被害者の遺体を捜しに山奥に入る。
その後、森野は被害者に似た風貌にイメチェンして、犯人がいるはずの喫茶店に現れて、真相を探ろうとする。しかし、この作品は予想されるなぞ解きや犯人との駆け引きといった方向には見向きもせず、ただ樹と森野の思わせぶりな会話が往復するだけ。その間、死体愛好の歴史やなぜ彼らがそれほどまでに死体に魅力を感じてしまうのかといった説明はなく、間延びしたシーンが繰り返されるばかり。中盤以降、あとふたつくらいは物語のヤマ場を用意してほしい。
結局、殺人犯に拉致された森野を樹の機転が救う。そして森野の過去を暴くことで彼女が別人であることを告白させる。幼い時に自分をいじめていた双子の姉を見殺しにし、死んだ彼女になり変ったというのだ。確かに衝撃的なことであり、そのトラウマを胸に秘めて生きていくのは高校生には荷が重すぎるとも思う。ならば逆に森野を「罪悪感抱えて生きています」的な少女ではなく、もっと明るい感じのアプローチにしたほうが、女の怖さをより強烈に表現できたのではないだろうか。。。