アンダーカヴァー WE OWN THE NIGHT
ポイント ★★★
DATE 08/10/14
THEATER シネマート
監督 ジェームズ・グレイ
ナンバー 250
出演 ホアキン・フェニックス/マーク・ウォールバーグ/ロバート・デュバル/エバ・メンデス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
犯罪撲滅に燃える警察官と、警察を侮っているロシアマフィア、そして警察官の息子でありながらマフィアの表のビジネスに加担している主人公。彼は義理人情で結束を固めつつ非情の掟で支配する犯罪組織よりも、血のつながった家族との絆を選ぶ。まだ電子機器や通信手段が限られていた80年代末のローテク潜入捜査、暴力を厭わないソ連軍くずれのロシアマフィア、豪雨の中の壮絶なカーチェイス。愛するものの死と復讐という、逃れられない運命に身を任せた男の正義に目覚める過程を緊迫感あふれるリアリズムで描く。
クラブのマネージャーのボビーは、警官の兄・ジョセフの昇進パーティでクラブオーナーの内偵を依頼されるが断る。だが、ジョセフが殺し屋に襲撃されたことからボビーは警察に協力する決心をする。
クラブオーナーの妻がボビーに示す愛情の深いこと。よく働く部下は息子同様に扱い、上客のようにもてなす。一方で絶対に裏切りを許さず、楯突くものは警察であろうとも力ずくで排除する。逮捕されたチンピラが自決することで、ロシアマフィアの恐怖の箍の強さを示すシーンは衝撃的だ。やがてボビーのおとり捜査で麻薬工場を突き止めて麻薬取引のボスを逮捕するが、逆に脱獄を許した上にボビーは父親を殺されてしまう。そのあたり、血で血で洗うマフィアと警察の抗争が手に汗握るスリルと激しいアクションを交えて再現される。
ただ不思議に思うのは、その後ボビーは警察官になるが、父と兄が警官だからといってNY市警はそれほど簡単にボビーを採用するものだろうか。他にもボビーはボスの逃亡後にクラブに戻ったりするが、無謀きわまるない行為。ボビーの彼女もおのれの置かれている立場を理解せずに勝手な行動をとるなど、無用な危険を冒しすぎる。また、ボビーが変心する前に、もう少し何らかの葛藤があってもよい。たとえば恋人がマフィアのボスの娘で、ボビーが自分の家族と恋人の板ばさみになって苦悩するなどのプロットがあればもう少し感情移入できたはずだ。