きつねと私の12か月
ポイント ★★★
DATE 08/9/10
THEATER スペースFS汐留
監督 リュック・ジャケ
ナンバー 220
出演 ベルティーユ・ノエル=ブリュノー/イザベル・カレ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
夜明け。清冽な空気が山を覆い、徐々に明るくなると共に風景が温度を持ち始める。空はどこまでも高く、草原も木々も色とりどりの表情を見せる。そんな自然が豊かに残るフランスの山岳地帯、少女は1匹のキツネを見つける。映画は、彼らの四季にわたる交流を通じて、人と動物のかかわり方を問う。友情は許されるが、決して相手より優位に立とうとしたり束縛してはいけない。その掟を学ぶことで少女は成長していく。
10歳の少女リラは学校の帰り道にキツネを見かけ、気を魅かれる。キツネは警戒して逃げるが、毎日のように会いに行くと、やがてキツネはリラから餌をもらうようになる。ある日、キツネに誘われるように山奥の森から鍾乳洞に入るうちに、リラは道に迷ってしまう。
雪の中でキツネがヤマネコに襲われたり、雌雄のキツネがダンスを踊るように交尾するシーンは躍動感にあふれている。耳を澄ませばハチの羽音から鳥のさえずり、獣の遠吠えから木の葉ずれの音まで、森には美しいメロディが満ちている。さらに、月明かりに照らされた夜の森でさまざまな動物が息を潜めている映像はおとぎの国に迷い込んだかのように幻想的。恐怖心を持った人間は寄せ付けないが、心を開いた人間は受け入れるかのように、さまざまな感情を見せる森の動植物に対する尊敬がスクリーンからほとばしる。
その後、リラはキツネをテトゥと名づけ、スカーフの首輪をはめる。しかし、首輪をヒモでつなぐとテトゥは狂ったように暴れてヒモを噛み切る。それは自由に生きることへの冒涜であるとリラは気付かない。さらに彼女の家に遊びに来たテトゥを部屋に招きいれたとき、ドアを閉めて逃げ道を断ってしまう。テトゥにとっては罠にはまった気分だったのだろう、パニックになった挙句、窓から飛び出してしまう。どんなに親密になったつもりでも、リラはテトゥの気持ちをまったく理解していなかった。あくまで人とも対等の立場に立とうとし、囚われの身を潔としないテトゥの行為は野生の魂を感じさせた。