こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ティンカー・ベル

otello2009-01-03

ティンカー・ベル


ポイント ★★*
DATE 09/1/1
THEATER WMKH
監督 ブラッドリー・レイモンド
ナンバー 1
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


花が咲き乱れ笑い声が耐えないおとぎ話の国は、まるでディズニーランドの「イッツ・ア・スモール・ワールド」のような世界。だが、妖精たちが住むその谷の環境は、もちろん魔法だけではなく地道な肉体労働によって支えられている。光や春を運ぶといった華やかな仕事の陰には、道具作りやメンテナンスが欠かせないという単純な事実。もの作りの才能を持つヒロインが派手な仕事に憧れるあまり自分の天分を忘れる姿は、マネーゲームという虚業に走り製造業を疎かにしてきた21世紀の米国への警鐘だ。


ピクシー・ホローで誕生した新しい妖精はもの作りの才能が認められ、ティンカー・ベルと名づけられる。道具作りや修理などを任されるが、人間の国・メインランドに行けないと知ったティンカー・ベルは他の才能を身につけようとする。失敗ばかり続けているうちに、春の準備をすべてぶち壊してしまう。


「夢を持て」とか「夢をあきらめるな」とよく言われるが、この映画ははっきりと「叶わない夢は持つな」と言い、ティンカー・ベルに、いくら努力しても才能がなければ成功しないという残酷な現実を突きつける。それよりも己の能力の範囲内で、精一杯頑張って工夫することこそ夢への近道とを強調する。彼女にとってそれはより使いやすい機械を作り、手作業に頼っていた製造工程の大量生産への変革。彼女が考案した工作機械によって劇的に効率が上がる過程は産業革命を見ているようだ。


サポートする役割しか与えられなくても、周囲に幸せを届けて感謝される喜び。やがてピクシー・ホローの女王に働きを評価されたティンカー・ベルはメインランド行きの許可を得て、組み立てたオルゴールの持ち主を探す。決してお行儀のよい優等生ではなく、夢に貪欲で時にジコチューにもなるティンカー・ベルの成長を通じて、「やりたいこと」より「やれること」をいち早く見つけ天職にするのが、人生を豊かにするとをこの作品は訴える。


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