こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

泣きたいときのクスリ

otello2009-01-06

泣きたいときのクスリ

ポイント ★★
DATE 08/11/28
THEATER 映画美学校
監督 福島三郎
ナンバー 290
出演 大東俊介/戸田菜穂/袴田吉彦/佐津川愛美
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


哀しい時、切ない時、どうしようもない時、涙を流したくなるほどつらいのに己の弱さを認めるのが嫌でつい我慢してしまう。電車の中で人目もはばからず号泣している男を見た周りの乗客が彼に違和感を覚える一方で、日常生活で泣けるほど心が動かされたことがないことに気づく。喜怒哀楽をつい抑えてしまいがちになる日本人に、もう少しストレートに感情を出していいんだよと声をかけるような語り口は優しさに満ちている。しかし、駅員や女子高生、ウエイトレスの演技があまりにも大げさで、映画を幼稚なものに貶めている。この作品の対象は中高生のレベルなのか、もう少ししみじみとした味わいを出さなければ大人が鑑賞するには物足りない。


ローカル線の「泣き薬師」駅の駅員・竹野は駅のベンチで悲しそうにたたずむ青年・龍一に声をかける。女高生の綾は電車で泣いていたおっさんの後をつける。左遷されたキャリアウーマンのエリカは飼い犬でさみしさを紛らわせる。サラリーマンの洋介は、泣けない自分を省みる。


「泣き薬師」駅を中心にそこを利用する人々が織りなす様々なエピソードが紹介されるのだが、それぞれが他のエピソードの伏線になっているわけではなく、緩いつながりでしかない。そもそも登場人物に「最近泣いていない」ことを思い出させたおっさんはいったいなぜ周りがドン引きするほどの大泣きをしていたのか。離婚して疎遠になった娘と久しぶりに会えるのがうれしくて仕方ないのだろうが、あれはまるで愛する者を永遠に失ったようだ。


このおっさんのおかげで、どんな時も涙をこらえて生きてきた洋介や、死んだ妹への思いを断ち切れずにいる龍一、仕事で追い込まれているエリカは、胸の重荷から解放される方法を教えられるのだが、「泣きたい時は思いっきり泣いてもいいのだ」というメッセージを残す謎の少女が「泣き薬師」の守護霊だったというオチもいかにも女高生が好みそうな都市伝説ぽいところを見ると、登場人物を若者だけにしぼったほうが良かったと思える。


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