サーチャーズ 2.0 SEARCHERS 2.0
ポイント ★★★
DATE 08/12/22
THEATER EB
監督 アレックス・コックス
ナンバー 310
出演 デル・ザモーラ/エド・パンシューロ/ジャクリン・ジョネット/サイ・リチャードソン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
ふと思いついたら、その時のノリで行動に移してしまう。実際にはあり得ないようなシチュエーションなのに、映画ならばまかり通るのだ。なんの準備もなく旅に出る2人の老人を通して、物語は俳優としてだけでなく人生でもついに主役になることができなかった男たちの夢をかなえていく。観客は同行する娘だけ、それでも数十年前の恨みを返すという目的に彼らは意気軒昂だ。道中交わされる、映画が好きでたまらない彼らの会話が映画ファンのトリビア心を刺激する。
日雇労働者のメルはフレッドという男と出会う。2人は子役として出演した映画でフロビシャーという脚本家に虐待されたという共通の過去から意気投合、フロビシャーに仕返しをするため彼がサイン会を開くというモニュメントバレーを目指す。
メルの娘・デライラを巻き込んでSUVの旅が始まるのだが、脱力感あふれる彼らの姿が笑える一方で、米国映画に関しては時を忘れて熱く語り合う。暇つぶしのような動機で始まった旅だが、過去の名作の登場人物と自分たちをクロスオーバーしていくうちに、いつしか理論武装し、2人は復讐劇の主人公になりきっていく。あくまで屁理屈に過ぎないのだが、いい年をしたジジイが子供のように目を輝かせて復讐について語り合うシーンはばかばかしくもうらやましい。
特に、復讐を果たした主人公は映画ではヒーローとなるが、古典演劇では主人公もまた死ぬといって、2人の理想論にデライラが水を差す場面がしみじみとおかしい。アホなジジイたちにまともに付き合ってられないと思いつつも正攻法で論破し、何も言い返せない2人をしり目にさっさと席を立つ。男のロマンを理解できない女という典型的な構図だか、結局は復讐に立ち会うという優しさも見せる。そしてクライマックスの「続・荒野の用心棒」を模した三角決闘も、超カルト映画クイズで決着をつけるという念の入れよう。ただ、この後の取ってつけたようなどんでん返しが作品の趣をぶち壊していたのが残念だった。